一 證據の採否は事實裁判所の自由裁量に屬するところであるから、原審が所論第一審公判準備手續及び原審公判における被告人の供述とは異つた原審公判における被告人の他の供述を證據に採つたからと言つて採證の法則に反するものといえない。 二 原判決は、本件強盜罪の構成要件たる犯罪事實の全部を被告人の自白だけで認定したものではなく、單に犯罪事實の一部を被告人の供述によつて認定したものであるから、憲法第三八條第三項に違反するものではない。(昭和二二年(れ)第一五三號同二三年六月九日大法廷判決參照)。 三 死刑が憲法第三六條の殘虐な刑罰に該當しないことは當裁判所の判例とするところでる(昭和二二年(れ)第一一九號同二三年三月一二日大法廷判決參照)。
一 原審公判における被告人の相反する供述の一部を採用した判決と採證の法則 二 犯罪事實の一部を被告人の供述のみで認定した場合と憲法第三八條第三項 三 死刑と憲法第三六條
刑訴法337條,憲法38條3項,憲法36條,刑訴應急措置法10條3項,刑法9條
判旨
犯罪事実の一部である強盗の目的(主観的意図)の認定について、被告人の供述だけでなく、犯行前の凶器準備や犯行時の状況等の客観的事実を総合して判断した場合には、自白のみによる犯罪認定を禁じた憲法38条3項等に違反しない。
問題の所在(論点)
犯罪構成要件の一部である「強盗の目的(犯意)」の認定において、被告人の自白のほかに、凶器の準備状況や犯行態様などの間接的な客観的事実を総合して認定することは、自白の補強法則に違反するか。
規範
憲法38条3項及び旧刑事訴訟法(現刑事訴訟法319条1項)が定める自白の補強証拠の要否に関し、犯罪事実の全部を被告人の自白のみで認定することは許されないが、犯罪事実の一部(特に犯意等の主観的要件)について自白を基礎としつつ、他の客観的事実や証拠を総合して認定する場合には、自白を唯一の証拠として犯罪を認定したものとはいえない。
重要事実
被告人は、強盗の目的でA宅に侵入し、A及びBに対し持参した手斧で切りつけて殺害したとして強盗殺人罪に問われた。被告人は捜査段階等で当初から強盗の目的があった旨を自白していたが、弁護人は「強盗の目的」という犯罪事実の一部が実質的に自白のみで認定されており、補強法則に反すると主張。具体的には、犯行当日に手斧を購入した事実等は認められるものの、それ自体は強盗の目的を直接裏付けるものではないとして上告した。
あてはめ
原判決は「最初から強盗の目的で侵入した」という事実を、被告人の自白のみで認定したのではない。被告人が犯行当日の朝に金物商から手斧1挺を購入し、予て護身用に持っていた短刀と共に携行して被害者宅に向かった事実、及び誰何されていきなり手斧で切りつけた事実を認定している。これら客観的な「凶器の準備」および「犯行の態様」という事実と被告人の供述を総合して犯意を認定しており、さらに犯罪事実全体としては検証調書や鑑定書、実物等の他の証拠も総合されている。したがって、自白を唯一の証拠としたものとは評価されない。
結論
被告人の供述と客観的事実を総合して犯罪事実を認定している以上、自白のみによる認定にはあたらず、補強法則違反の違法はない。
実務上の射程
主観的構成要件(殺意や不法領得の意思など)の認定において、どの程度の客観的事実があれば補強証拠として十分かという文脈で活用できる。犯行直前の準備行為や凶器の客観的事実が、主観的意図の自白に対する補強となり得ることを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和22(れ)153 / 裁判年月日: 昭和23年6月9日 / 結論: 棄却
一 原判決は、被告人の自白のみによつて判示事實を認定したものではなくて、被告人の自白の外に、Aの提出した(強盗)盗難被害届と匕首の存在とを總合して判示事實を認定したものであることは記録上明白であり、右證據によつて優に判示事實を認定するに足るものである。所論の如く被告人がB、C等と共謀したという事實に對する證據は被告人の…
事件番号: 昭和30(あ)1348 / 裁判年月日: 昭和30年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯人が被告人であること(犯人識別)については、自白のほかに補強証拠がなくても、犯罪事実の客観的な発生が他の証拠によって証明される限り、憲法38条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は複数の犯行事実(第一ないし第四事実)により起訴された。そのうち第二事実について、被告人は犯行を自白していたが…