窃盜罪と強盜罪とは、ともに財物奪取行爲より成り、唯後者にあつてはその手段として暴行又は脅迫を施用すると云う點において前者と異るものがあるに過ぎないので、兩者はいずれも同一罪質と云うを妨げないのみならず、ともに同一の章たる第三六章の下に規定されている刑法犯であるから、これを刑法第五五條にいわゆる同一の罪名とするにつき、毫も異とする所はない。原判決が所論の如く右法條を適用して被告人の判示所爲に對して連續犯の成立ありとしたとて、何等違法とする筋合はない。
窃盜罪及び強盜罪と刑法第五五條
刑法55条,刑法235条,刑法236条
判旨
窃盗罪と強盗罪は、ともに財物奪取という本質を共有し同一罪質といえるため、旧刑法55条の「同一の罪名」に含まれ、連続犯が成立し得る。
問題の所在(論点)
窃盗罪と強盗罪との間で、旧刑法55条にいう「同一の罪名」の該当性が認められ、連続犯として一罪に処断することが可能か。
規範
刑法上の連続犯(旧刑法55条)における「同一の罪名」とは、必ずしも条文を同じくすることを要せず、罪質を同じくするものであれば足りる。財物奪取を目的とする罪において、その手段に暴行・脅迫を伴うか否かの差異は、同一罪質の認定を妨げるものではない。
重要事実
被告人らは、窃盗行為および強盗行為に及んだ。原審は、これら一連の行為について犯意の継続が認められるとして、旧刑法55条に基づき窃盗罪と強盗罪を連続犯と断じ、刑の重い強盗の一罪として処断した。これに対し弁護人は、窃盗罪と強盗罪は罪質や類型が異なるため、連続犯の成立は認められないと主張して上告した。
事件番号: 昭和22(れ)154 / 裁判年月日: 昭和22年12月24日 / 結論: 棄却
一 窃盜の罪と強盗の罪とは、その手段において異なるところはあるが、財物奪取行爲たる罪質においては同一であり、ともに同一の章の下に規定されてゐる刑法犯であるから、窃盜と強盗との連續行爲は、刑法第五五條にいわゆる同一の罪名に觸れるものである。 二 原審が連續犯として處断した行爲について、辯護人が連續犯にならないと主張するこ…
あてはめ
窃盗罪と強盗罪は、いずれも他人の財物を奪取する行為を本質とする点において共通している。強盗罪は、その奪取の手段として暴行または脅迫を用いる点において窃盗罪と異なるに過ぎず、両者は同一の罪質を有すると解される。また、両罪は刑法第36章(窃盗及び強盗の罪)に一括して規定されており、体系的にも近接している。したがって、犯意の継続が認められる以上、これらを包括して連続犯と認めることに違法はない。
結論
窃盗罪と強盗罪は同一罪質であり、連続犯の成立が認められる。よって、原判決の判断は正当であり、本件上告を棄却する。
実務上の射程
現在は連続犯規定(旧刑法55条)が削除されているため、本判決の直接の結論(一罪としての処断)は実務上用いられない。しかし、複数の罪名間に「同一罪質」を認める際の論理構成は、現在でも「かすがい現象」における重なり合いの判断や、罪数論における包括一罪の検討、さらには公訴事実の同一性の判断枠組みにおいて、罪質の共通性を基礎づける際の参考となり得る。
事件番号: 昭和25(れ)1949 / 裁判年月日: 昭和26年3月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪と強盗罪であっても、それらが連続して行われた場合には包括して一つの連続犯を構成し得る。また、連続犯の関係にない他の犯罪とは併合罪として処理される。 第1 事案の概要:被告人が行った判示第一の各窃盗行為と、第二の各強盗行為について、原判決はこれらを一つの連続犯として認定した。一方で、第四(一)…
事件番号: 昭和22(れ)92 / 裁判年月日: 昭和22年12月4日 / 結論: 棄却
一 連續一罪を構成すべき數多の行爲を判示するには、各個の行爲の内容を一々具體的に判示することは要しない。數多の行爲に共通した犯罪の手段方法その他の事實を具體的に判示するの外、その連續した行爲の始期終期回數等を明かにし、且つ財産上の犯罪で、被害者又は贓額に異同があるときは、被害者中或る者の氏名を表示するの外、他は員數を掲…