原判決を見ると、所論の未決勾留日數通算の點に關しては、「刑法第二一條を適用し當審に於ける未決勾留日數百二十日を右の刑に算入する」旨説示されてあるばかりでなく、未決勾留日數の通算は裁判所の自由裁量に屬するところであるから、原審が前記のように説示しただけで、何故に百二十日通算するのを相當とするかの理由を詳細に説明しなかつたからというて、これをもつて直ちに理由不備の違法あるものと爲すとはできない。
未決勾留日數通算の理由の判示
刑法21條
判旨
未決勾留日数の本刑算入は裁判所の自由裁量に属する事項であるため、判決理由において具体的な算入日数の根拠を詳細に説明しなくても、直ちに理由不備の違法とはならない。
問題の所在(論点)
未決勾留日数の本刑算入について、判決理由においてその日数を算出した具体的な根拠や相当性の理由を詳細に示さないことは、判決に理由を付さない違法(理由不備)に該当するか。
規範
未決勾留日数の通算(刑法21条)は、裁判所の自由裁量に属する。したがって、判決理由において算入の根拠となる法令を引用し、算入する日数を示していれば足り、なぜその日数を相当としたかについて詳細な理由を説示しなかったとしても、理由不備(刑訴法上の違法)には当たらない。
重要事実
被告人は、窃盗目的で組合事務所に侵入し、発見した理事Bから木製薙刀で打たれた後、逃走を阻止しようとした理事Cに暴行を加え傷害を負わせたとして、準強盗傷人罪等で起訴された。原判決は被告人を懲役10年に処し、未決勾留日数のうち120日を本刑に算入したが、理由の中では刑法21条を適用する旨を述べるにとどまり、なぜ「120日」という期間を選んだのかという具体的な理由は説明しなかった。被告人側は、この点に理由不備の違法があるとして上告した。
あてはめ
まず、未決勾留日数を本刑に算入するか否か、および何日を算入するかは、刑法21条に基づき裁判所の合理的な裁量に委ねられている。本件原判決は、理由部において「刑法21条を適用し、当審における未決勾留日数百二十日を右本刑に算入する」旨を明確に説示している。このように、適用法条と算入日数が明示されている以上、裁量権の行使結果は示されており、裁判所がその期間を適切と判断したことは明白である。それ以上に詳細な算定根拠の説明を要すると解するのは、裁判所の裁量権の性質に鑑みて相当ではない。
結論
算入日数の詳細な理由説明を欠いても理由不備の違法があるとはいえない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
量刑判断全般における「理由の記載」の程度を検討する際の参考となる。特に裁量的判断(未決勾留、執行猶予の成否等)については、結論に至るプロセスを微細に記述せずとも、適用条文と結論が対応していれば形式的な理由不備は回避できることを示唆している。ただし、現代の刑事裁判実務(刑訴法335条)や被告人の納得感の観点からは、可能な限り具体的な考慮要素を示すことが望ましい点に留意が必要である。
事件番号: 昭和26(あ)1646 / 裁判年月日: 昭和26年9月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未決勾留日数の本刑算入(刑法21条)に関し、上告を棄却する場合において、当審における未決勾留日数の一部を本刑に算入することを認めた。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起したが、最高裁判所はその上告趣意が刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないと判断した。また、同法411条を適用して職権で判決を破…
事件番号: 昭和26(あ)1164 / 裁判年月日: 昭和26年8月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未決勾留日数の本刑算入は裁判所の裁量に属し、その全部又は一部を算入しないことは違法ではなく、憲法14条等の差別待遇にも当たらない。 第1 事案の概要:被告人が上告審において、原審が未決勾留日数を本刑に算入しなかったことの違法性、および裁判の迅速を欠いたこと(迅速な裁判の保障違反)を理由として原判決…