一 原審は第三回公判において手續の更新をしたが、その際第一回公判調書に記載するとおりの手續を更新したことになつているが、その第一回公判調書には裁判長の公判期日延期の告知をした旨の記載があるだけで、その他には何等訴訟手續の行われた跡の記載がないのであるから、更新するというわけにはいかぬので、右第三回公判における更新手續は適法なものとは云えない、というのである。ところで記録を調べてみると、調書の記載は所論のとおりである。しかし、右の第一回公判調書というのは、第二回公判調書の誤記であること明らかであつて第二回公判調書には事實審理の記載があるから原審が更新の手續をしたのは當然で論旨は理由がない。 二 判決中主文の部分を特に「主文」と表示することを法律は要求していないので、この表示がないからといつて原判決を以て違法とするわけにはいかぬ。
一 第二回を第一回と記載した公判調書の誤記と第三回公判における手續の更新 二 判決中主文の部分を特に「主文」と表示しない判決とその適法性
舊刑訴法64條,舊刑訴法356條,舊刑訴法410條16號,舊刑訴法49條1項
判旨
判決書において「主文」という見出しの表示が欠けていても、法律が当該表示を明示的に要求していない以上、判決は違法ではない。また、未決勾留日数の本刑算入は裁判所の広範な裁量に属し、算入しないことが直ちに違法となるものではない。
問題の所在(論点)
判決書に「主文」との見出しがないことや、未決勾留日数を本刑に算入しないことが、刑事訴訟手続上の違法事由(特に判決の正確性や裁量の逸脱)に該当するか。
規範
判決書における形式的記載事項について、法律(刑事訴訟法)が特定の文言や見出し(「主文」等)の表示を義務付けていない場合、その表示の欠如のみをもって判決の違法を構成することはない。また、未決勾留日数の算入の可否については裁判所の裁量事項である。
重要事実
被告人Aらに対する刑事裁判において、原審の判決書には「主文」という見出しの表示が欠落していた。また、判決において未決勾留日数が一切本刑に通算されず、公判調書の記載に「第一回」と「第二回」の誤記等が存在したことから、弁護人は判決手続および内容の違法を主張して上告した。
あてはめ
まず、判決書の形式について、法律は判決の内容として主文の記載を求めているが、特に「主文」という文字を表示することまでは要求していない。したがって、見出しの欠如は形式的不備にあたらない。次に、未決勾留日数の算入については、法が裁判所の裁量に委ねている事項であるため、不算入という判断自体が裁量を逸脱したものとは言えない。さらに、調書上の誤記についても、文脈上明らかに特定の公判期日を指すものと認められる場合は、手続の更新等に実質的な瑕疵はないと判断される。
結論
判決書に「主文」という表示がなくても違法ではなく、未決勾留日数の不算入も裁判所の裁量権の範囲内である。上告棄却。
実務上の射程
判決の形式的有効性や裁量判断の限界を画した事例である。実務上、明白な誤記や形式の見落としがあっても、それが手続の本質や法的要求事項を直接害さない限り、判決の効力は維持されるという判断枠組みとして活用できる。特に未決勾留の算入については、現行法下でも裁量事項である点は共通する。
事件番号: 昭和23(れ)1833 / 裁判年月日: 昭和24年4月26日 / 結論: 棄却
記録を調べてみるとその丁附けに誤記のあること所論の通りである。しかし記録の丁數は書類整理の便宜上これをその欄外に記載するだけで法規の要求するものではないのみならず裁判は證據に基いてなされるものであつて、記録によつてなされるのではない。そうして本件記録中丁附けに誤記ある部分は何れも原判決が證據として採用しているものではな…
事件番号: 昭和26(あ)1164 / 裁判年月日: 昭和26年8月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未決勾留日数の本刑算入は裁判所の裁量に属し、その全部又は一部を算入しないことは違法ではなく、憲法14条等の差別待遇にも当たらない。 第1 事案の概要:被告人が上告審において、原審が未決勾留日数を本刑に算入しなかったことの違法性、および裁判の迅速を欠いたこと(迅速な裁判の保障違反)を理由として原判決…