記録を調べてみるとその丁附けに誤記のあること所論の通りである。しかし記録の丁數は書類整理の便宜上これをその欄外に記載するだけで法規の要求するものではないのみならず裁判は證據に基いてなされるものであつて、記録によつてなされるのではない。そうして本件記録中丁附けに誤記ある部分は何れも原判決が證據として採用しているものではないから右の誤記が判決に影響のないことも明らかである。
記録の丁數の誤記と上告理由
舊刑訴法72條
判旨
訴訟記録の丁付けに誤りがあっても、それが判決の基礎となる証拠の採否等に影響しない限り、判決を破棄すべき違法とはならない。
問題の所在(論点)
訴訟記録の丁付けに誤記がある場合、それが直ちに判決に影響を及ぼすべき違法(旧刑事訴訟法下における上告理由)となるか。
規範
訴訟記録の丁付けは書類整理の便宜上の記載にすぎず、裁判は記録そのものではなく証拠に基づいて行われるものである。したがって、記録の丁付けに誤記がある場合であっても、その誤記が判決に影響を及ぼさないときは、判決を破棄すべき事由には当たらない。
重要事実
刑事訴訟において、訴訟記録の丁付けに誤記が存在していた。弁護人は、この記録の不備を理由として原判決に違法がある旨を主張し、上告した。しかし、当該丁付けに誤りがある部分は、原判決が証拠として採用した箇所ではなかった。
あてはめ
本件における記録の誤記部分は、原判決が証拠として採用している箇所ではない。裁判は証拠に基づいてなされるものであり、整理上の便宜にすぎない丁付けの誤りが、証拠の採否や事実認定に影響を与えた事実は認められない。したがって、本件の誤記は判決に影響のない軽微な不備にすぎないといえる。
結論
本件の丁付けの誤記は判決に影響を及ぼさないため、原判決を破棄する理由にはならない。
実務上の射程
訴訟手続き上の形式的な不備が直ちに判決を破棄すべき違法となるわけではなく、実体的な裁判結果(事実認定や証拠採用)への影響の有無が基準となることを示した。答案上は、手続違背を主張する際に、それが実質的に判決の適正を損なうものであるかを論証する際の参考となる。
事件番号: 昭和26(れ)1659 / 裁判年月日: 昭和26年11月6日 / 結論: 棄却
判決の証拠説明に架空の証拠を挙げていても、それが誤記であること明らかで全然存在しないものであるときは、事実認定の心証に影響を及ぼす筈なく、従つて判決にも影響を及ぼす虞は全然ないものであるから、判決破棄の理由にならない。
事件番号: 昭和23(れ)1473 / 裁判年月日: 昭和24年2月8日 / 結論: 破棄差戻
右訊問調書については原審公判廷では適法な證據調をしたものと認めるに由なく、かかる證據調をしない右訊問調書を犯罪事實認定の資料に供した原判決は採證の法則に反した違法であるもので右の違法は原判決に影響を及ぼすものといわなければならない。