判決書における文字の挿入が法定の要式を缺いた場合にも、刑訴法第四一〇條第二一號のような規定がないから、直ちにこれを無効とすべきでなく、その効力の有無は、專ら、裁判所が諸般の状況を勘考して、自由に判斷すべきものである。
文字の挿入が法定の要式を缺く判決書の効力
刑訴法72條,刑訴法410條21號
判旨
判決書における文字の挿入が刑事訴訟法72条の定める方式を欠く場合であっても、直ちに無効となるものではなく、裁判所が諸般の状況を考慮してその効力を判断すべきである。作成者の印章や契印等から作成者が正当に記入したものと認められるときは、当該挿入は有効な判決書の内容となる。
問題の所在(論点)
判決書における文字の挿入について、刑事訴訟法72条に規定された「挿入した字数を書き、印を押さなければならない」という方式を欠く場合、当該判決は無効となるか。方式違背の効力が問題となる。
規範
判決書における文字の挿入が刑事訴訟法72条の方式を欠く場合であっても、直ちに無効となるわけではない。その効力の有無は、裁判所が諸般の状況を勘案し、それが判決作成者によって正当に記入されたものと認められるか否かによって、自由に判断すべきである。
重要事実
原判決書において文字の挿入がなされていたが、上部欄外に「削除一字」との記載があるのみで、挿入字数の記載がなかった。一方で、当該挿入箇所には判事の署名下の印と同一の印が押捺されており、その印は他の適式な訂正箇所や契印とも同一であった。
あてはめ
本件では挿入字数の記載がなく、刑事訴訟法72条の方式を欠いている。しかし、挿入箇所には判事の署名下の印と同一の印が押されており、これは適式な訂正や契印と同一のものである。したがって、この挿入は判決作成者により正当に記入されたものであり、字数記載の欠落は単なる遺脱にすぎないと認められる。諸般の状況から、作成者の真正な意思に基づくものと評価できるため、当該挿入は有効である。
結論
判決書における文字挿入の方式違背は、作成者の正当な記入と認められる限り判決の効力に影響せず、本件挿入は有効である。
実務上の射程
訴訟手続の方式違背が直ちに無効事由(刑訴法410条各号)とならない場合において、当該手続の真正が他の状況から担保されるかという判断枠組みを示す。答案上は、書面の成立の真正が争点となる場面で、形式的な不備があっても実質的に作成者の意思に基づくことが証明されれば有効とし得る法理として活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1833 / 裁判年月日: 昭和24年4月26日 / 結論: 棄却
記録を調べてみるとその丁附けに誤記のあること所論の通りである。しかし記録の丁數は書類整理の便宜上これをその欄外に記載するだけで法規の要求するものではないのみならず裁判は證據に基いてなされるものであつて、記録によつてなされるのではない。そうして本件記録中丁附けに誤記ある部分は何れも原判決が證據として採用しているものではな…
事件番号: 昭和23(れ)1501 / 裁判年月日: 昭和23年12月24日 / 結論: 棄却
一 公判請求書記載の事實と原判示事實との間に被害物品について多少の差異があるとしても、具體的な窃盜の犯行そのものには異同がないのであるから、原判決は審判の請求を受けない事件について判決し若しくはこれを受けた事件について判決しなかつた違法はない。 二 判決の認定事實における日時と公訴事實における日時とがたまたま異つていて…