判旨
起訴状謄本の送達及び検察官による起訴状朗読が適法に行われた直後であれば、裁判長が犯行の日時場所を重ねて読み聞かせることなく被告人に発問し、これに対する被告人の供述を得たとしても、その内容に不明確な点はなく証拠として許容される。
問題の所在(論点)
検察官の起訴状朗読直後、裁判長が具体的な起訴事実を重ねて説明せずに発問して得られた被告人の供述について、証拠として採用することの適法性が、被告人の防御権行使の観点から問題となる。
規範
新刑事訴訟法下において、裁判所は起訴状謄本を被告人に送達し(271条1項)、公判開始時には検察官が起訴状を朗読しなければならない(291条1項)。これらの手続を経て被告事件の具体的範疇が明示されている場合には、裁判長が改めて事実関係を詳細に読み聞かせなくとも、直ちになされた被告人の供述は証拠能力を有する。
重要事実
第一審の第一回公判日前、被告人らに対し適法に起訴状の謄本が送達されていた。公判期日において、検察官が犯行の日時・場所が明記された起訴状を朗読した直後、裁判長が起訴状を重ねて読み聞かせることなく被告人に対して発問を行い、被告人がこれに回答した。原審は、この被告人の供述を証拠として採用し、自判により有罪判決を言い渡した。
あてはめ
本件では、法定の手続に従い起訴状謄本が事前に送達され、かつ公判廷で検察官により起訴状が朗読されている。起訴状には犯行の日時・場所が明記されており、その直後に行われた裁判長の発問は、被告人にとって審判対象が明確な状況下でなされたものである。したがって、重ねての読み聞かせを欠いたとしても供述内容の明確性に疑いはなく、刑事訴訟法400条但書に基づく自判において当該供述を証拠とすることに違法はない。
結論
被告人の供述を証拠として採用した原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
冒頭手続における権利告知や罪状認否の段階で、検察官の朗読により事実が特定されている以上、裁判所による事実の再復唱は必須ではないことを示す。もっとも、実務上は被告人の理解を確認し防御権を全うさせるため、丁寧な事実の摘示が望ましいとされる点に留意が必要である。
事件番号: 昭和26(あ)3544 / 裁判年月日: 昭和27年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴状朗読後に行われる被告人の罪状認否における陳述は、適法に証拠として採用することができる。 第1 事案の概要:被告人は、検察官による起訴状朗読に続いて行われた罪状認否において、犯罪事実を認める旨の陳述を行った。弁護人は、この段階における陳述は証拠となし得ないこと、および当該陳述が真意に出たもので…
事件番号: 昭和26(れ)1659 / 裁判年月日: 昭和26年11月6日 / 結論: 棄却
判決の証拠説明に架空の証拠を挙げていても、それが誤記であること明らかで全然存在しないものであるときは、事実認定の心証に影響を及ぼす筈なく、従つて判決にも影響を及ぼす虞は全然ないものであるから、判決破棄の理由にならない。