判決作成後、これを作成した判事と異なる判事の構成する法廷において右判決が言渡された場合には、たとえ、判決作成の日と言渡の日とが同日であり、かつ、判事に更迭があつても、既に同日作成された判決を宣告するだけのことであるから、刑事訴訟法第三五四條但書によつて何等違法の點はない。
判決言渡期日における判事の更迭と辯論更新の要否
刑訴法354條但書,刑訴法410條16號
判旨
判決の宣告は、既に作成された判決を言い渡す行為にすぎないため、弁論に関与した裁判官が判決書を作成した後に裁判官の更迭があった場合でも、弁論の更新を経ずに更迭後の裁判官が宣告を行うことは適法である。
問題の所在(論点)
弁論に関与し判決書を作成した裁判官と、実際に判決を宣告した裁判官が異なる場合、弁論の更新(刑事訴訟法315条本文参照)を経ずに宣告を行うことは許されるか。
規範
判決の宣告は、審理に関与した裁判官によって既に作成された判決の内容を被告人に告知する手続である。したがって、判決書の作成後に裁判官の更迭が生じた場合であっても、更迭後の裁判官が当該判決を宣告することは、旧刑事訴訟法354条但書(現行法315条但書参照)の趣旨に照らし、弁論の更新を要せずに行うことができる。
重要事実
東京高等裁判所における被告人に対する被告事件において、昭和22年11月13日に裁判長武田軍治、判事三淵乾太郎、判事堀義次の構成で事実及び証拠調べ並びに弁論を終結した。同年11月27日、上記3名の裁判官によって署名捺印された判決書が作成された。しかし、同日の判決宣告期日においては、裁判官の更迭があり、裁判長三宅富士郎、判事渡辺五三九、判事堀義次の構成によって判決が言い渡された。弁護人は、審理に関与していない裁判官が判決を宣告したこと、及び更迭があるにもかかわらず弁論の更新がなされていないことは違法であるとして上告した。
あてはめ
本件では、判決原本の末尾の日付および公判調書から、審理に関与した武田、三淵、堀の3判事によって昭和22年11月27日に判決書が作成されたことが認められる。一方、同日の宣告は三宅、渡辺、堀の3判事による法廷で行われたが、これは既に内容が確定し作成済みの判決を単に宣告したものである。宣告は判決内容の外部的公表にすぎず、裁判官の更迭後に新たな証拠調べや判断を伴うものではないため、弁論の更新を要しないとする旧刑事訴訟法354条但書の規定が適用される事案といえる。
結論
判事の更迭後に弁論の更新を行わず、更迭後の裁判官によって判決の宣告のみを行う手続に違法はない。
実務上の射程
裁判官の更迭と弁論更新の原則(法315条)の例外として、判決の宣告期日における裁判官の構成変更については、既に評決を終え判決書が作成されている限り、弁論の更新は不要である。実務上、判決の言渡しのみを担当する代読的な運用を正当化する根拠として機能する。
事件番号: 昭和24新(れ)232 / 裁判年月日: 昭和25年3月30日 / 結論: 破棄差戻
職權を以て調査するに、刑訴法第四三條第一項により原判決の基礎となつた原審第一回公判に列席した裁判官は、裁判長判事杉浦重次判事若山資雄及び同白木伸の三名であること記録上明白である。しかるに刑訴規則第五四條、第五五條による原裁判書を見るに原判決をした裁判官は、裁判長判事杉浦重次判事若山資雄、同影山正雄の三名である從つて、原…