職權を以て調査するに、刑訴法第四三條第一項により原判決の基礎となつた原審第一回公判に列席した裁判官は、裁判長判事杉浦重次判事若山資雄及び同白木伸の三名であること記録上明白である。しかるに刑訴規則第五四條、第五五條による原裁判書を見るに原判決をした裁判官は、裁判長判事杉浦重次判事若山資雄、同影山正雄の三名である從つて、原審々理に關與しなかつた判事影山正雄が原審判決に關與したこととなるわけで、かくのごときは判決に影響を及ぼすべき法令の違反があるものといわなければならない。よつて、當法廷は、刑訴法第四一一條に從い原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認め、辯護人我妻源二郎の上告趣意に對し判斷するまでもなく、原判決を破棄すべきものとし、同第四一三條に則り主文の通り判決する。
審理に關與しない判事が判決に關與した違法と著しく正義に反する一場合
刑訴規則54條,刑訴規則55條,刑訴法411條1號,刑訴法413條
判旨
審理に関与していない裁判官が判決に関与することは、判決に影響を及ぼすべき法令の違反に該当し、破棄事由となる。
問題の所在(論点)
審理(公判)に関与しなかった裁判官が判決に関与することが、刑事訴訟法上の判決破棄事由に該当するか。
規範
判決は、その基礎となる審理に関与した裁判官によってなされなければならない。審理に関与していない裁判官が判決に関与することは、裁判の適正を担保する手続規定に違反し、判決に影響を及ぼすべき法令の違反(刑訴法411条1号参照)を構成する。
重要事実
原審の第1回公判に列席し、審理に直接関与した裁判官は裁判長杉浦、判事若山、判事白木の3名であった。しかし、作成された判決書によれば、判決に関与した裁判官は裁判長杉浦、判事若山、判事影山の3名と記載されていた。
あてはめ
本件では、公判記録上、審理に関与したことが明白な判事白木に代わり、審理に関与した事実が認められない判事影山が判決に関与している。このように審理の直接性を欠く裁判官が判決を出すことは、刑訴規則54条・55条等の趣旨に反する重大な手続違背であり、判決に影響を及ぼすべき法令の違反といえる。
結論
審理に関与していない裁判官が判決に関与した原判決には法令違反があるため、原判決を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
裁判所の構成の適法性に関する論点で活用される。直接主義の観点から、審理と判決の主体が一致すべきことを示す基本的な判例であり、実務上は絶対的控訴理由(刑訴法377条1号)や上告理由としての「法令違反」を主張する際の根拠となる。
事件番号: 昭和22(れ)338 / 裁判年月日: 昭和23年3月27日 / 結論: 棄却
判決作成後、これを作成した判事と異なる判事の構成する法廷において右判決が言渡された場合には、たとえ、判決作成の日と言渡の日とが同日であり、かつ、判事に更迭があつても、既に同日作成された判決を宣告するだけのことであるから、刑事訴訟法第三五四條但書によつて何等違法の點はない。