判旨
判決の言渡しは、必ずしも審理に関与して判決書に署名すべき判事によってなされる必要はなく、審理に関与していない裁判官が含まれる合議体によってなされても違法ではない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法上、判決の言渡しを行う裁判官は、必ず当該事件の審理に関与し、判決書に署名すべき者でなければならないか。
規範
判決の言渡しは、当該事件の審理に関与し、かつ判決書に署名捺印すべき裁判官自身によってなされることを要しない。審理に関与した裁判官により判決の内容が確定している以上、言渡しという形式的行為を行う裁判官に限定はない。
重要事実
第一回公判期日には鈴木・檀崎・佐々木の3名が列席し、審理が行われた。しかし、後の判決言渡期日には、審理に関与していない石坂判事が加わり、石坂・鈴木・佐々木の3名が列席した。そして、審理に関与しておらず判決書に署名も行わない石坂判事が裁判長として判決の言渡しを行った。
あてはめ
本件では、判決の内容自体は審理に関与した裁判官ら(鈴木・佐々木ら)によって決定されており、各公判調書の署名等にも不備はない。言渡期日に列席した石坂判事は、審理には関与していないものの、裁判長として言渡しという宣告手続を執ったに過ぎない。判決の成立と効力発生のプロセスにおいて、言渡しの主体を審理関与者に限定すべき法的根拠はなく、石坂判事が言渡しを行ったことは適法である。
結論
判決の言渡しは、審理に関与し判決書に署名すべき判事によりなされなくとも差し支えないため、本件の判決言渡しに違法はない。
実務上の射程
判決内容の決定(評議)と、その外部的表示(言渡し)を区別する。裁判官の交代等がある場合でも、判決の内容が審理に関与した構成員により適法に決定されている限り、言渡し時の構成員が異なっても直ちに無効とはならないという実務上の運用を支える判例である。
事件番号: 昭和22(れ)338 / 裁判年月日: 昭和23年3月27日 / 結論: 棄却
判決作成後、これを作成した判事と異なる判事の構成する法廷において右判決が言渡された場合には、たとえ、判決作成の日と言渡の日とが同日であり、かつ、判事に更迭があつても、既に同日作成された判決を宣告するだけのことであるから、刑事訴訟法第三五四條但書によつて何等違法の點はない。