判旨
判決の作成に関与していない裁判官が判決の言渡しに関与することは適法であり、判決の作成日と言渡し日が同一であっても、作成に関与した裁判官が出席できない事情があれば、署名した裁判官と言渡しに出席した裁判官が異なっていても違法ではない。
問題の所在(論点)
判決の作成に関与していない裁判官が判決の言渡しに関与することの適法性、および署名裁判官と言渡し裁判官が相違する場合の判決の有効性が問題となった。
規範
判決作成に関与した裁判官と判決言渡しに関与する裁判官は、必ずしも同一である必要はない。判決書に署名した裁判官が言渡し期日に出席できない場合、他の裁判官によって言渡しがなされることは手続上許容される。
重要事実
被告人の上告において、原判決の作成に関与して署名した裁判官と、言渡し期日に出席した裁判官が異なっていた。弁護人は、判決作成日と言渡し期日が同一であるにもかかわらず、出席裁判官が異なることは原判決の記載が虚構であることを示すものであり、憲法および訴訟法に違反すると主張した。また、被告人への実刑判決により家族が生活困難に陥る点も憲法25条違反として主張された。
あてはめ
最高裁判例の示すところによれば、判決作成に関与しない裁判官が言渡しに関与することは適法である。判決作成日と言渡し期日が同一であっても、作成に関与した裁判官が物理的または職務上の理由により出席できない事態は想定される。したがって、署名裁判官と言渡し出席裁判官が異なるという一事をもって、原判決の記載が虚構であると断ずることはできず、手続上の違法は認められない。また、実刑による家族の生活困窮は刑罰の付随的結果にすぎず、憲法25条の生存権規定に違反するものではない。
結論
判決の作成と言渡しに関わる裁判官が異なっていたとしても違法ではなく、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法における判決言渡しの有効性に関する基本判例である。裁判官の交代や事故がある場合でも、作成済みの判決を他の裁判官が代読・言渡しできる実務上の根拠として引用される。
事件番号: 昭和25(あ)1027 / 裁判年月日: 昭和26年5月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官が公務のため出張しており署名押印が不可能な場合、他の裁判官がその理由を付記して署名押印すれば、当該判決の効力に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:本件の上告審において、判決に関与した合議体の裁判官のうち一人が、判決作成時において公務により出張中であった。そのため、当該裁判官は判決書に自ら署…