第一審裁判所の判決書において有罪として認定摘示された犯罪事実の個数と宣告された判決において有罪として告知された犯罪事実の個数とが合致するかどうか、即ち判決書には全部有罪となつているが、宣告の際には一部分を無罪として告知したかどうかを上訴審において判断する場合、争なき宣告刑をその判断の資料の一つに供することは妨げない。
宣告刑を、判決書と告知された判決との間に、有罪として認定された犯罪事実の個数が合致するか否かの判断の資料に供することができるか
刑訴法335条1項,刑訴法336条,刑訴法333条1項,刑訴法379条,刑訴法381条,刑訴規則34条,刑訴規則35条
判旨
判決言渡時に告知された理由と判決書原本の記載が一致するか否かは、事件期日簿や公判結果簿の記載、証拠関係、量刑の妥当性等を総合して判断すべきである。第一審判決書の作成が遅延したとしても、特段の事情がない限り、右諸点から告知内容が判決書通りと認められれば、判決に影響を及ぼす違法はない。
問題の所在(論点)
判決書原本の作成が著しく遅延した事案において、言渡時の告知内容と判決書記載内容の相違の有無をいかに判断すべきか。また、その調査方法として証拠関係や量刑を参酌することは許されるか。
規範
判決言渡の際に行われる理由の要旨の告知(刑事訴訟法、同規則)の内容と、後に作成された判決書原本の記載との一致については、公判調書等の訴訟記録だけでなく、事件期日簿、検察庁の公判結果簿の記載状態、さらには証拠による事実認定の合理性や宣告された量刑の妥当性といった実体的な側面をも含めて、総合的に調査・認定すべきである。
重要事実
第一審裁判所が判決を宣告したが、判決書の原本が作成されたのは言渡から相当期間経過した後であり、記録の送付に約1年半を要した。被告人側は、言渡時に告知された理由と判決書の理由が異なっている(一部無罪の趣旨であったはずだ)と主張して上告した。しかし、当時の事件期日簿等には全事実有罪の記載があり、一部無罪の場合になされる特段の記載もなかった。また、証拠関係に照らせば全事実を有罪と認めるのが相当であり、一部無罪とした場合の量刑としては重すぎるという事情があった。
あてはめ
本件では、判決書の作成遅延は認められるものの、同時期の他事件と比較して本件のみが遅滞した等の特異な事情はない。また、言渡当日中に記載されたと認められる事件期日簿や公判結果簿に、一部無罪を示す記載がない。さらに、記録上も全事実につき犯罪の証明が十分であること、及び一部無罪と仮定した場合の量刑の重さを考慮すれば、言渡時にも判決書通り全事実を有罪とする理由が告知されたと認めるのが相当である。したがって、控訴審において事実取調べ(刑訴法393条1項但書)を欠いたとしても、判決に影響を及ぼす違法はない。
結論
言渡時の告知理由と判決書記載理由は一致していると認められ、判決に影響を及ぼす違法(刑訴法411条1号)は認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
判決書の不当な作成遅延や調書の不備がある場合において、宣告内容を事後的に推認するための判断要素を示したものである。特に、実体法的な「量刑の妥当性」を宣告内容認定の資料とすることを認めている点が実務上の特徴である。答案上は、判決の告知手続の瑕疵が争点となる場面で、記録の総合的な調査による認定の許容性を指摘する際に活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)4232 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品等関与罪における故意(知情)の有無は、買受物品の性質、数量、売渡人の属性、態度など、取引を巡る諸般の客観的事情を総合して判断されるべきである。 第1 事案の概要:被告人が物品を買い受けた際、当該物品が盗品等であることについて知情(故意)があったかどうかが争われた事案である。第一審および第二審に…
事件番号: 昭和25(れ)1224 / 裁判年月日: 昭和25年10月31日 / 結論: 棄却
一 論旨は原審認定の被告人の犯行について被告人は原審に於て従記の地位にあつたことを主張しているのであるからこれは旧刑事訴訟第三六〇条第二項に所謂法律上刑の減免の原由たる事実上の主張に当るにも拘らず原判決は何らこれに対する判断を示していないのは判断遺脱の違法があると主張するが、所論の様な陳述があつたとしてもこれをて刑の減…