一 論旨は原審認定の被告人の犯行について被告人は原審に於て従記の地位にあつたことを主張しているのであるからこれは旧刑事訴訟第三六〇条第二項に所謂法律上刑の減免の原由たる事実上の主張に当るにも拘らず原判決は何らこれに対する判断を示していないのは判断遺脱の違法があると主張するが、所論の様な陳述があつたとしてもこれをて刑の減免の原由たる事実の主張があつたのとは認められない。 二 原審裁判長は被告人に意見及び最後い述べたいことはないかと問を発していることは所論の通りであるから被告人に対し最終陳述の機会を与えたものと言わなければならない。もしも、裁判長の発した右問に対し被告人が別に陳述する必要があつたなら其機会を与えられたのであるから陳述すべき筈であるに何も陳述した形跡はなく又裁判長が被告人の発言を禁じた形跡もない等に右「別にあります」の調書記載は「別にありません」の誤記と認むるを相当とする。調書の粗雑な点は誠に遺憾であるが何れも誤記と認められる。 三 被告人Aの弁護人選任届其他本件記録を調べて見ると山下弁護人が原審における被告人Aの弁護人であり同人の為め弁論したことは明らかであつて岡田弁護人が被告人Aの弁護人であるとは認められないから所論岡田弁護人とあるは山下弁護人の誤記と認めるを相当とする。
一 従犯の地位にあつた旨の主張と法律上刑の減免の原由たる事実上の主張 二 被告人に対する最終陳述の機会の附与と「別にありません」を「別にあります」とした調書記載の誤記の認定 三 公判調書における弁護人の姓の誤記たることの認定
刑法62条,旧刑訴法360条2項,旧刑訴法60条,旧刑訴法74条,旧刑訴法349条3項,旧刑訴法40条17号,旧刑訴法64条
判旨
被告人が「従犯の地位にあった」との主張は、単なる事実の主張であって、刑の減免の事由たる事実の主張には当たらないため、判決において特段の判断を示す必要はない。また、公判調書に「別にあります」と記載されていても、前後の状況から被告人に最終陳述の機会が与えられたと認められる場合には、誤記として扱われる。
問題の所在(論点)
1. 被告人が「従犯の地位にあった」と主張することが、判決で判断を示すべき「法律上刑の減免の原由たる事実上の主張」に該当するか。2. 公判調書の記載上「別にあります」とあっても、最終陳述の機会を奪ったことにならないか。
規範
旧刑事訴訟法360条2項(現行法上の判決の理由記載義務に関連)が定める「法律上刑の減免の原由たる事実上の主張」とは、刑法上の構成要件や刑の減免事由に直結する具体的な事実主張を指す。また、被告人の最終陳述権が保障されているか否かは、裁判長が発問し陳述の機会を与えたという客観的状況に基づき判断される。
重要事実
被告人Aは贓物寄蔵罪で、被告人Bは建造物侵入罪等で起訴された。Bの弁護人は、Bが犯行において「従犯の地位にあった」と主張したが、原審はこの点について判決で判断を示さなかった。また、被告人Aの公判調書には、裁判長からの最終陳述の促しに対し「別にあります」と記載されていたが、具体的な陳述の内容は記録されておらず、裁判長が発言を禁じた形跡もなかった。なお、原判決の証拠説明に「自転車のタイヤ」とあるのは、証拠関係から「自動車のタイヤ」の誤記であると認められる状況であった。
あてはめ
1. 従犯の主張について:被告人Bが主張した「従犯の地位」という点は、本件の具体的な犯行状況を前提とした場合に、直ちに法律上の刑の減免を導くような事実の主張とは認められない。したがって、判決でこれに対する判断を個別に示す必要はない。 2. 最終陳述について:裁判長は被告人らに対し、意見や最後に述べたいことはないかと発問している。被告人がこの機会に陳述せず、また裁判長が発言を禁じた形跡もないことから、調書の「別にあります」との記載は「別にありません」の誤記と認めるのが相当である。よって、最終陳述の機会は実質的に与えられていたといえる。
結論
1. 従犯の地位にあるとの主張は、判決で特段の判断を要する主張には当たらない。2. 被告人には最終陳述の機会が与えられており、調書の矛盾した記載は誤記として処理される。上告棄却。
実務上の射程
刑事訴訟法における判決の理由記載義務(335条2項)の範囲を画定する際の参考となる。特に、被告人の有利な事情の主張が「法律上の減免事由」に該当するか否かの判断基準を示す。また、公判調書の記載が明らかに誤記であると認められる場合には、その文言に拘束されず実質的な審理経過に基づいて手続の適法性を判断する実務運用を是認している。
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