原判決がその擬律の條において、刑法施行法第三條第三項の適用を明示していないことは所論指摘のとおりである。しかし原判決の處斷刑は右刑法施行法の條項を適用した結果であることは、原判文上自ら窺知されるところであるから、右摘條を欠くの一事をもつて原判決に法令違背ありと云うことはできない(昭和二二年(れ)第二二二號昭和二三年四月八日第一小法廷判決參照、判定集二卷四號三〇七頁三一一頁以下所掲)。論旨は理由がない。
刑法施行法第三條第三項の適用を明示しない判決の正否
刑法47條,刑法施行法3條
判旨
被告人の自白がある場合、犯罪の主観的要素である知情(故意)の認定については、自白のほかに直接的な補強証拠を必要としない。
問題の所在(論点)
自白の補強証拠(刑訴法319条2項)の要否および範囲に関して、犯罪の主観的要件である「知情(故意)」の認定に際し、自白以外の直接的な補強証拠が必要となるか。
規範
憲法38条3項及び刑事訴訟法319条2項が定める自白の補強証拠は、犯罪の客観的側面に及ぶ必要があるものの、犯罪の主観的要件(故意・知情等)については、自白のほかに直接的な補強証拠を必要としない。
重要事実
被告人が贓物(ぞうぶつ)罪の容疑で起訴された事案において、被告人は贓物であることの知情(故意)について自白していた。原判決は複数の証拠を総合して知情を認定したが、弁護人は、犯罪の主観的要素である知情の点についても自白以外の直接的な補強証拠が必要であると主張して上告した。
あてはめ
被告人の自白がある中で、贓物であることの知情という犯罪の主観的要件については、自白のみ、あるいは自白と間接的な証拠の組み合わせで認定することが可能である。本件において、原判決が挙げた証拠(三)及び(四)を総合すれば、被告人の贓物知情の点は十分に認定できる。知情のような主観的要素は、客観的要素を裏付ける補強証拠によって罪体の一部が証明されることで足り、それ自体に直接的な補強証拠を求める必要はないと解される。
結論
主観的要件については自白以外の直接的な補強証拠を必要としない。したがって、原判決の認定に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
補強証拠が必要な範囲(補強の範囲)に関するリーディングケースの一つ。答案上は、補強証拠が「罪体(犯罪の客観的側面)」に及んでいれば足りることを論証する際、「主観的要素には不要」とする本判例の趣旨を引用し、故意等の認定を簡潔に済ませる論拠として活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1542 / 裁判年月日: 昭和24年3月15日 / 結論: 棄却
賍物罪において賍物であることの知情の點について被告人の自白が唯一の證據であつたとしてもその他の犯罪事實について補強證據がある限り刑訴應急措置法第一〇條第三項に違反するものではない。(昭和二三年三月一六日言渡昭和二二年(れ)第二三八號事件判決参照)
事件番号: 昭和24(れ)79 / 裁判年月日: 昭和24年6月18日 / 結論: 棄却
たとえ、被告人等が贓物たるの情を知つていた點に關する直接の證據は、被告人の檢察官に對する供述の聽取書のみであるとしても、右自白は原判決舉示の他の證據によつて補強せられ、その眞實性が保障されているのであるから、この點に關して所論のごとき違法ありということはできない。(昭和二三年(れ)第一五四二號、昭和二四年三月一五日第三…