たとえ、被告人等が贓物たるの情を知つていた點に關する直接の證據は、被告人の檢察官に對する供述の聽取書のみであるとしても、右自白は原判決舉示の他の證據によつて補強せられ、その眞實性が保障されているのであるから、この點に關して所論のごとき違法ありということはできない。(昭和二三年(れ)第一五四二號、昭和二四年三月一五日第三小法廷判決參照)
賍物罪において賍物であることの知情の點について被告人の自白が唯一の證據である場合と刑訴應急措置法第一〇條第三項
刑法252條,憲法38條3項,刑訴應急措置法10條3項
判旨
犯罪事実のうち、主観的構成要件(贓物たるの情を知っていた点)に関する証拠が自白のみであっても、他の証拠によって自白の真実性が保障されていれば補強法則に反しない。
問題の所在(論点)
主観的構成要件(故意・知情)について直接の補強証拠がない場合、自白のみに基づき認定することは補強法則に違反するか。
規範
自白の補強証拠は、自白の真実性を保障するに足りる証拠であれば足り、客観的構成要件のみならず、被告人の故意などの主観的要素(内心的事実)についても直接の補強証拠が存することまでは要しない。
重要事実
被告人A、B、Cは贓物罪等の疑いで起訴された。原審は、被告人らが贓物であることの情(知情)を有していた点について、被告人らの検察官に対する自白(供述録取書)を唯一の直接証拠として事実認定を行った。弁護人は、知情に関する直接の補強証拠が欠けていることから、自白のみによる処罰を禁じた憲法38条3項及び刑事訴訟法の補強法則に違反すると主張して上告した。
あてはめ
原判決は、被告人らの自白以外にも、原判決が挙示する各証拠を総合して犯罪事実を認定している。たとえ贓物たるの情を知っていたという点(知情)に関する直接の証拠が被告人らの自白のみであったとしても、当該自白は原判決が挙示した他の客観的な証拠によってその真実性が保障されているといえる。したがって、証拠全体を総合すれば、自白の真実性を担保するに足りる補強証拠が存在するものと判断される。
結論
自白の真実性が他の証拠により保障されている以上、主観的事実について自白以外の直接証拠がなくても補強法則違反の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
主観的構成要件要素(故意、目的等)について自白以外に直接の証拠を求めることは実際上困難であるため、客観的事実についての補強証拠から自白の真実性が担保されれば足りるという、実務上の補強法則の範囲を画した判例である。
事件番号: 昭和23(れ)1542 / 裁判年月日: 昭和24年3月15日 / 結論: 棄却
賍物罪において賍物であることの知情の點について被告人の自白が唯一の證據であつたとしてもその他の犯罪事實について補強證據がある限り刑訴應急措置法第一〇條第三項に違反するものではない。(昭和二三年三月一六日言渡昭和二二年(れ)第二三八號事件判決参照)