所論は、原審公判調書並びに判決書に単に「判事何某」と記載してあるだけで「裁判官判事何某」と記載していないのは裁判所を適法に構成しない違法があると主張する。しかし、判事はすべて裁判官であり裁判官でない判事は存しないのであるから、「判事」の表示さえあれば何らの違法もないのである。論旨は、刑訴第四〇五条の上告理由に当らない。
公判調書並びに判決書に「判事何某」と記載することの適否
刑訴法48条,刑訴規則44条2号,刑訴規則第46条,刑訴規則55条
判旨
公判調書や判決書において、裁判官の官職を「裁判官判事」と重ねて表記せず、単に「判事」と記載することは、裁判所の適法な構成に欠けるものではなく適法である。
問題の所在(論点)
裁判官の官職表記として「判事」とだけ記載されていることが、裁判所の適法な構成を欠く違法事由に当たるか。
規範
「判事」はすべて「裁判官」であり、裁判官でない判事は存在しない。したがって、文書上に「判事」という官職の表示があれば、その者が裁判官であることを示すものとして十分であり、適法な表記として認められる。
重要事実
原審の公判調書および判決書において、裁判官の氏名の前に「裁判官判事」と付さず、単に「判事何某」とだけ記載されていた。これに対し被告人側は、裁判所を適法に構成しない違法(刑訴法377条1号等)があるとして上告した。
あてはめ
本件における書面上の「判事」という表示は、司法行政上の官職を示すと同時に、当然にその者が裁判官であることを包含している。判事の身分を有する者が裁判に従事している以上、実質的にも形式的にも「裁判官」による構成がなされているといえる。ゆえに、重ねて「裁判官」という語を付さずとも、裁判所の構成に何ら欠陥は生じない。
結論
「判事」との表記があれば裁判所の適法な構成に欠けるところはなく、刑訴法405条の上告理由に当たらない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
裁判所構成法の形式面に関する争点である。実務上、裁判官の肩書きは慣習的に「判事」や「裁判官」と略記されるが、判旨は「判事」とあれば裁判官であることが自明であるとして、形式的な不備を認めない。答案上は、裁判所の構成の適法性を論じる際、形式的記載の些末な相違が直ちに構成の違法を導くものではないことを示す根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)377 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官とは裁判の職務を行う官吏の総称であり、「判事」はすべて「裁判官」に含まれる。したがって、裁判書や公判調書において「判事」と表示することは、当該裁判官が適法に関与したことを示すものとして正当である。 第1 事案の概要:被告人が提起した上告において、原審(控訴審)の第一回および第二回公判調書に「…