区検察庁検察官事務取扱の職務を担当する地方検察庁検察官が、簡易裁判所のした判決に対して控訴するにあたり、誤つて控訴申立書にその肩書を地方検察庁検察官検事と表示したとしても、同検察官が区検察庁検察官事務取扱の職務もあわせて担当しており、その資格で控訴申立をしたことが記録上明らかで、肩書の明白な誤記または遺脱にすぎないと認められる場合には、右控訴の申立は適法である。
検察官作成の控訴申立諸に肩書の誤記または遺脱がある場合と控訴申立の適否。
刑訴法374条,刑訴規則58条
判旨
控訴申立書に記載された検察官の肩書が誤っていても、当該検察官が本来の申立権限を有する職務を兼任していることが記録上明らかな場合は、単なる誤記または遺脱として控訴の申立を適法と認めることができる。
問題の所在(論点)
簡易裁判所の判決に対し、地方検察庁検察官の名義でなされた控訴申立が、当該検察官に区検察庁事務取扱の資格がある場合に、適法な訴訟行為として認められるか。
規範
訴訟手続の適法性は、書面の形式的記載のみに拘泥せず、記録上明らかな客観的事実に基づき、当該行為者に実質的な権限が認められるか否かによって判断すべきである。書面の記載に誤りがある場合であっても、それが実質的な資格の欠如を意味せず、単なる表記上の誤記または遺脱と評価できる場合には、訴訟行為の効力を否定すべきではない。
重要事実
水戸簡易裁判所の判決に対し、水戸地方検察庁の検察官が控訴を申し立てた。控訴申立書には「水戸地方検察庁検察官」とのみ記載されていたが、当該検察官は当時、水戸区検察庁検察官事務取扱の職務もあわせて担当していた。本来、簡易裁判所の判決に対する控訴権は区検察庁の検察官に属するものであるが、原審は本件控訴を適法と判断したため、弁護人が上告した。
あてはめ
本件において、控訴を申し立てた検察官は水戸地方検察庁所属であったが、同時に水戸区検察庁検察官事務取扱の職務を担当していたことが記録上明らかである。そうであれば、当該検察官は適法に控訴を申し立てる実質的な資格を有していたといえる。したがって、申立書における資格の記載は、実質的な権限の欠如を示すものではなく、単なる表示上の誤記または遺脱にすぎないと評価される。このような瑕疵は訴訟行為の効力を左右する致命的なものとは解されない。
結論
本件控訴の申立は適法であり、原判決の判断に誤りはない。
実務上の射程
刑事訴訟手続における書面の不備(特に官職の記載誤り)の治癒に関する射程を持つ。権限を有する者が実際に行為を行っている以上、形式的な記載ミスを理由に申立を却下するのは妥当でないとする、実質的妥当性を重視した判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)2336 / 裁判年月日: 昭和26年1月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる量刑の不当や事実誤認を理由とする上告は適法な上告理由に当たらない。また、職権による破棄をすべき事由が認められない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、原判決の刑の量定および事実認定に誤りがあるとして、職権による原判決の破棄を求めた。また、被告人本人は、寛大な…