一 新刑訴法においては判決書に契印がないということだけでは判決を破棄すべき法令違反ではない。(刑訴法第三七八條、第三七九條參照) 二 判決書に裁判官全員又は裁判長が契印しなければ判決書の各葉が連續しないとはいえない、されば原判決書の各葉に陪席裁判官一人の契印がある以上その連續に欠くるところは認められない。
一 判決書における契印の欠缺と刑訴法第四一一條 二 合議体による判決書の契印
刑訴法規則58條2項,刑訴法379條,刑訴法411條,刑訴規則55條,刑訴規則58條2項
判旨
判決書に裁判官全員の契印がないことは、直ちに判決を破棄すべき法令違反(刑訴法378条、379条)には当たらず、一部の裁判官の契印があれば判決書の連続性は認められる。
問題の所在(論点)
判決書に裁判官全員や裁判長の契印がないことが、刑事訴訟法378条または379条に規定する「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」に該当し、判決を破棄すべき事由となるか。
規範
刑事訴訟法上、判決書に裁判官全員または裁判長の契印がないことのみをもって、当然に判決を破棄すべき絶対的控訴理由(378条)や、訴訟手続の法令違反(379条)に該当するものとは解されない。判決書の各葉が連続していることが認められれば、形式的な不備として判決を無効とする理由にはならない。
重要事実
被告人の弁護人が、原判決の判決書に裁判官全員または裁判長の契印がないことを理由として、判決手続に法令違反があると主張して上告した事案。本件の判決書には、陪席裁判官1人の契印が各葉に押されていた。
あてはめ
刑事訴訟法は判決書への契印の欠如を直接の破棄事由としておらず、判決書の各葉が連続していることが確認できれば足りる。本件では、原判決書の各葉に陪席裁判官1人の契印が存在しており、これによって書面の連続性に欠けるところはないと認められる。したがって、裁判官全員の契印がないことをもって、判決を破棄すべき程度の法令違反があるとはいえない。
結論
判決書に一部の裁判官による契印がある以上、全員の契印がなくても法令違反には当たらず、上告は棄却される。
実務上の射程
裁判書の形式的要件に関する判例。実務上、契印の欠如のような形式的不備が訴訟手続の無効や破棄事由となるかは、その不備が内容の真正や連続性を損なう程度に至っているかという観点から判断される。答案上では、379条の法令違反の該当性を検討する際の「軽微な手続不備」の例として位置づけられる。
事件番号: 昭和25(れ)123 / 裁判年月日: 昭和25年6月16日 / 結論: 棄却
論旨は原審における被告人に對する公判期日の通知書には廳印もなく裁判長の署名捺印もないから適法な通知書ではなく、從つて原審では公判期日の適法な通知がないことゝなり、かゝる違法の手續を是認した原判決は憲法第三一條違反であるというのであつて、所論は一應憲法第三一條違反を以つて原判決を攻撃しているのであるから、再上告理由として…