判旨
裁判官の契印を欠く判決書であっても、判決書の形式、内容、作成に至る各般の事情からその真正が認められる場合には、直ちに無効とはならない。
問題の所在(論点)
判決書に裁判官の契印が欠如している場合、刑事訴訟法上の判決の成立要件(法定の形式具備)を欠くものとして、当該判決は無効となるか。
規範
判決書に裁判官の契印が欠如している場合であっても、当該判決書の形式、内容、その他判決書作成に関する諸般の事情を総合的に考慮し、当該書面が裁判官によって作成された真正なものであると判断できる場合には、判決の効力は妨げられない。
重要事実
第一審判決において、判決書に裁判官の契印(複数の頁にわたる文書の連続性を示すための印)が欠如していた。被告人側は、この契印の欠如を理由として判決の無効を主張し、上告した。
あてはめ
本件第一審判決書には確かに裁判官の契印が欠如していた。しかし、当該判決書の形式的な外観、判示された内容、および判決書が作成されるに至った各般の事情を精査すれば、当該判決書が担当裁判官によって作成された真正なものであると認められる。形式的な不備があるからといって、作成の真正が客観的に担保されている以上、判決を無効とする理由はないと解される。
結論
判決書に契印が欠如していても、諸般の事情からその真正が認められる限り、判決は有効である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
訴訟手続の形式的瑕疵が判決の効力に及ぼす影響に関する事例である。実務上、作成の真正(偽造や差し替えの疑いがないこと)が実質的に確認できれば、形式的な瑕疵は直ちに絶対的控訴理由や判決無効事由にはならないという柔軟な解釈を示すものとして活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1312 / 裁判年月日: 昭和24年2月24日 / 結論: 棄却
一 舊刑訴第七一條第二項は、公文書の公正を期するために訓示的規定に過ぎないのであるから、たとい、その一部に同條項所定の契印が缺如しているとしても、その形式及び内容に照らし正當の連絡がありその間に落丁又は後日の剥脱等のないことが認められるときは、契印遺脱の一事を以て直ちに該文書を無効となすべきではない。 二 同一事實に關…
事件番号: 昭和28(あ)1120 / 裁判年月日: 昭和28年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書に契印が欠けているとしても、それが直ちに判決の効力に影響を及ぼし、刑訴法411条により破棄すべき事由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた事案において、弁護人は原判決の判決書に契印が欠けていることを指摘し、これが憲法違反または刑訴法411条に該当する重大な事由であると主…