被告人の検察官に対する供述調書の一部に、その作成者である検察事務官の契印を欠いていても、その形式および内容から正当に連絡があるものと認められるときは、その供述調書は無効ではない。
契印を欠く検察官面前調書の効力。
刑訴規則58条2項
判旨
調書の一部に契印が欠けている場合であっても、その形式および内容から正当な連絡があると認められるときは、当該調書を当然に無効とすべきではない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟規則等で求められる調書の契印が一部に欠けている場合、当該調書は形式的不備として無効となるか。
規範
調書に契印が欠けている場合であっても、その形式的側面(編綴の状況等)および実質的内容の連続性・関連性からみて、各葉が一体のものとして正当に連絡していると認められるときには、当該調書は有効なものとして取り扱うことができる。
重要事実
被告人Aの弁護人は、提出された調書の一部に契印がなかったことから、その調書は無効である旨を主張して上告した。なお、判決文からは当該調書の具体的な種類(供述調書か検証調書か等)や、契印が欠落した具体的な箇所等の詳細は不明である。
あてはめ
事件番号: 昭和28(あ)1120 / 裁判年月日: 昭和28年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書に契印が欠けているとしても、それが直ちに判決の効力に影響を及ぼし、刑訴法411条により破棄すべき事由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた事案において、弁護人は原判決の判決書に契印が欠けていることを指摘し、これが憲法違反または刑訴法411条に該当する重大な事由であると主…
本件では、調書の一部に契印がないものの、判例の趣旨(昭和24年2月24日判決)に照らせば、その形式および内容から正当に連絡があると認められる。したがって、一部の契印の欠如という形式的瑕疵のみをもって、直ちに当該調書の証拠能力や効力を否定することはできないと判断される。
結論
本件調書は無効とはならず、それに基づく原判決に法令違反はない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟実務において、規則等に定める形式的要件に一部不備がある書面であっても、内容の連続性により文書の同一性が担保されている限り、有効性が認められる余地があることを示す。答案上は、証拠の形式的有効性が争点となった際の考慮要素として「形式・内容からの正当な連絡」を用いることができる。
事件番号: 昭和25(あ)2836 / 裁判年月日: 昭和27年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟規則58条2項の規定する供述調書への契印は、公文書の公正を期するための訓示規定に過ぎず、契印の欠缺のみをもって直ちに当該文書が無効となるわけではない。 第1 事案の概要:被告人の刑事裁判において、第一審判決が証拠として採用した司法警察員作成の第2回供述調書には、刑事訴訟規則58条2項が求め…
事件番号: 昭和40(あ)12 / 裁判年月日: 昭和41年5月26日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】刑法155条1項の「公務所の署名」の有無については、文書の形式的外観から客観的に判断すべきであり、公務所の名称の記載等がない文書については、有印公文書としての成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:被告人らは、公務上の文書である「昭和二五年度支出負担行為簿」に虚偽の記入をし、これを行使した…
事件番号: 昭和34(あ)2139 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
確定裁判を経ない数個の犯罪が併合罪の関係にある場合でも、必ずしもこれを併合審判しなければならないものではないのであつて、原番がその措置に出なかつたことをもつて違法ということはできない。