判旨
刑事訴訟規則58条2項の規定する供述調書への契印は、公文書の公正を期するための訓示規定に過ぎず、契印の欠缺のみをもって直ちに当該文書が無効となるわけではない。
問題の所在(論点)
数枚にわたる供述調書において、刑事訴訟規則58条2項所定の契印が欠けている場合、当該調書は当然に無効(証拠能力を欠くもの)となるか。
規範
刑事訴訟規則58条2項(数枚の紙にわたる供述調書の契印)は、公文書の公正を期するための訓示規定に過ぎない。したがって、当該文書の形式および内容を総合的に考慮し、真正に作成されたことが認められる場合には、契印が遺脱していても直ちに証拠能力を否定する(無効とする)理由にはならない。
重要事実
被告人の刑事裁判において、第一審判決が証拠として採用した司法警察員作成の第2回供述調書には、刑事訴訟規則58条2項が求めている契印が押されていなかった。弁護人は、当該調書は同規則に違反する無効な書類であり、これを証拠に供したことは違法であるとして上告した。
あてはめ
本件供述調書に契印がない事実は認められるものの、同規則は訓示規定である。本件においては、調書の形式や記載内容を勘案すれば、契印が漏れているという一事のみをもって、当該調書の真正な作成が否定されるとはいえない。したがって、公文書としての適正な手続の趣旨を根本から損なうような瑕疵とは解されないため、証拠としての効力を失わない。
結論
契印のない供述調書であっても、真正に作成されたと認められる限り証拠能力は認められ、これを用いた原判決は正当である。
実務上の射程
刑事手続における微細な形式不備が直ちに証拠排除を招くわけではないことを示す。もっとも、調書の内容の同一性や連続性が疑われる場合には、真正作成の要件(刑訴法321条等)の判断において不利に働く可能性があるため、実務上は訓示規定であることを理由に軽視すべきではない。
事件番号: 昭和34(あ)229 / 裁判年月日: 昭和35年3月3日 / 結論: 棄却
被告人の検察官に対する供述調書の一部に、その作成者である検察事務官の契印を欠いていても、その形式および内容から正当に連絡があるものと認められるときは、その供述調書は無効ではない。