一 同一被告人に對し二個の窃盜の事實が併合罪として起訴せられた場合審理の結果右二個の事實を一個の犯罪と認めて判決しても審判の請求を受けた事件について判決しないという違法はない。 二 同一被告人に対し二個の窃盜の事実が併合罪として起訴せられた場合、審理の結果、右二個の事実を一個の犯罪と認めて判決しても、審判の請求を受けた事件について判決しないという違法はない。 三 記録について見るに、札幌地裁において本件に關し昭和二三年四月一九日に判決言渡しがあり、被告人から札幌高裁へ控訴の申立があつたので、札幌高等檢察廳から同裁判所へ一件記録の送付があつたのは同年一二月二一日であつて、同裁判所は翌二四年八月三日本件に關する公判期日を同年九月一二日と指定したことが判るのである。かように右期日の指定が八月後になつている事實は同裁判所において事案が輻湊していることを示すものであつて、不幸にしてかような客観的情勢の結果により審判が遲れ憲法第三七條第一項に違反したとしても、それは判決に影響を及ぼさないことが明らかであるから、上告の理由とすることができないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一〇七一號同年一二月二二日大法廷判決參照)論旨は理由がない。
一 二個の起訴事實を一個の犯罪と認めることの適否 二 二個の起訴事実を一個の犯罪と認めることは適法か 三 裁判が迅速を欠き憲法第三七條第一項に違反した場合と上告理由
舊刑訴法410條18號前段,舊刑訴法411條,旧刑訴法410条18号前段,憲法37條1項
判旨
審判の遅延が裁判所の事案輻輳等の客観的情勢による場合には、憲法37条1項違反を理由として判決を覆すことはできない。また、公判調書に非公開の旨の記載がない限り、公判は公開されたものと推定される。
問題の所在(論点)
1. 裁判所の過密なスケジュール等の客観的事由による審理の遅延が、憲法37条1項違反として判決の破棄事由となるか。 2. 公判調書に「公開した」旨の明示的な記載がない場合、裁判の公開原則(憲法82条)に反すると評価されるか。
規範
1. 憲法37条1項の「迅速な裁判」の保障に関し、裁判所の事案の輻輳といった客観的情勢による審判の遅延が生じたとしても、それが判決に影響を及ぼさないことが明らかな場合には、上告理由とはならない。 2. 憲法82条の裁判の公開に関し、公判調書に特に裁判を公開しなかった旨の記載がない限り、当該公判廷は公開されたものと解すべきである。
重要事実
被告人が窃盗等の罪に問われた事案において、第一審判決の言渡しが昭和23年4月19日、控訴申立による記録送付が同年12月21日、控訴審の公判期日指定が翌24年8月3日(期日は9月12日)であった。弁護人は、この審理の遅延が憲法37条1項に違反し、かつ控訴審の公判調書に公開の記載がないことが憲法82条等に違反すると主張して上告した。また、追公判請求書記載の窃盗事実(計算器・現金の窃取)について、判決が判断を逸脱しているとも主張した。
あてはめ
1. 本件では控訴審の期日指定までに約8か月を要しているが、これは裁判所における事案の輻輳という客観的情勢に基づくものである。このような遅延は判決に影響を及ぼさないことが明らかであり、憲法違反の主張は理由がない。 2. 公判調書の記載について、非公開とする旨の特段の記録がない以上、適法に公開されたものと推認される。したがって、公開の記載がないことのみをもって憲法違反とはいえない。 3. 事実認定の逸脱については、被告人が一連の窃取(西洋紙、現金、計算器)を同一日の出来事として自白しており、原判決の認定事実はこれらを含んでいると解されるため、判断の遺脱はない。
結論
本件上告を棄却する。審判の遅滞や公開手続の不備に関する憲法違反の主張はいずれも採用できず、判決の判断逸脱も認められない。
実務上の射程
「迅速な裁判」の権利侵害が認められるためのハードルは極めて高く、裁判所の多忙等の事情がある場合は否定されやすい(高田事件判決前の基準を示すもの)。答案上、公判手続の適法性を論じる際、調書の記載から公開の有無を推定する手法として参照し得る。
事件番号: 昭和23(れ)1071 / 裁判年月日: 昭和23年12月22日 / 結論: 棄却
一 裁判が迅速を缺き憲法第三七條第一項に違反したとしても、それは判決に影響を及ぼさないことが明らかであるから、上告の理由とすることができない。 二 裁判所が證據に引用した被告の自白が、その裁判所の公判廷における自白であるならば、それは憲法第三八條第三項の自白に含まれないことは、當裁判所の判例として示したところである。