強姦致傷罪については告訴の取消があつても公訴棄却の判決をなすべきではない。
強姦致傷罪と告訴の取消
刑法181條,刑訴法364條5號
判旨
13歳未満の者に対する強姦致傷罪の成立において、強制性交等(当時の強姦)の手段として脅迫が用いられたか否かは犯罪の成否に影響せず、また、強姦致傷罪は非親告罪であるため、告訴の取消しがあっても公訴棄却の事由とはならない。
問題の所在(論点)
1. 13歳未満の者に対する強姦致傷罪の成否において、脅迫手段の有無が犯罪の成立を左右するか。 2. 強姦致傷罪の訴訟条件として、告訴の取消しが公訴棄却の事由となるか(強姦致傷罪の非親告罪性)。
規範
1. 13歳未満の婦女に対する姦淫(旧刑法177条後段)を内容とする強姦致傷罪においては、姦淫に際して脅迫等の手段を現実に用いたか否かは犯罪の成否に関わらない。 2. 強姦致傷罪(旧刑法181条)は、強姦罪(旧刑法177条)が親告罪であるのに対し、結果的加重犯として非親告罪であると解されるため、有効な告訴の存在は訴訟条件ではない。
重要事実
被告人は、被害者が13歳未満であることを知りながらこれと交接し、外陰部処女膜裂傷等の傷害を負わせたとして強姦致傷罪で起訴された。弁護人は、被害者の言動から脅迫の事実はなく、合意に近い状態であったこと、また傷害と被告人の行為との間に因果関係がないこと等を主張し、さらに被害者側から告訴の取消しがあったため公訴は棄却されるべきであると主張して上告した。
あてはめ
1. 刑法177条後段(当時)は、13歳未満の者に対する姦淫それ自体を強姦と擬制しており、暴行・脅迫の存在は構成要件上不要である。したがって、原審が脅迫の存在を認定した点に事実誤認があるとの主張は、犯罪の成立を左右しない。 2. 本件は強姦致傷として起訴されており、同罪は親告罪ではない。記録上告訴の取消しが認められたとしても、非親告罪である以上、裁判所が公訴棄却の判決を下すべき法的根拠はない。
結論
13歳未満の者に対する強姦致傷罪は、脅迫の有無にかかわらず成立し、かつ非親告罪であるため、告訴の取消しがあっても公訴棄却とはならず、有罪判決は維持される。
実務上の射程
強姦致傷罪(現:強制性交等致死傷罪)が非親告罪であることを明示した点に意義がある。現行法下でも、16歳未満の者に対する性交等(刑法177条2項・3項)において暴行・脅迫は不要であり、致傷の結果が生じれば非親告罪として処罰されるという論理構成に転用できる。
事件番号: 昭和27(あ)4325 / 裁判年月日: 昭和28年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強姦致傷罪は、当時の刑法等の規定に照らし、告訴を必要とする親告罪には当たらない。 第1 事案の概要:被告人Aら4名は、強姦致傷罪の容疑で起訴され、有罪判決を受けた。これに対し弁護人は、自白の強制による違憲や事実誤認を主張するとともに、強姦致傷罪が親告罪であることを前提として、有効な告訴等の訴訟条件…
事件番号: 昭和44(あ)649 / 裁判年月日: 昭和44年7月25日 / 結論: 棄却
一三才未満の者に対し、その反抗を著しく困難にさせる程度の脅迫を用いてわいせつの行為をした場合には、刑法一七六条の前段と後段との区別なく右法条に該当する一罪が成立する。