一三才未満の者に対し、その反抗を著しく困難にさせる程度の脅迫を用いてわいせつの行為をした場合には、刑法一七六条の前段と後段との区別なく右法条に該当する一罪が成立する。
一三才未満の者に対しその反抗を著しく困難にさせる程度の脅迫を用いてわいせつ行為をした場合の擬律
刑法176条
判旨
13歳未満の者に対し、その反抗を著しく困難にさせる程度の脅迫を用いてわいせつな行為をした場合、強制わいせつ罪(刑法176条、現・不同意わいせつ罪)の「前段」と「後段」の区別なく、同条に該当する一罪が成立する。
問題の所在(論点)
13歳未満の者に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした場合、刑法176条前段(強制わいせつ)と後段(準強制わいせつ)のいずれが適用されるのか、あるいは両者が重畳的に適用され一罪となるのか。
規範
13歳未満の者に対して、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為を行った場合、それが「13歳未満」という属性に基づくか、あるいは「暴行・脅迫」という手段に基づくかを問わず、刑法176条(当時の強制わいせつ罪)に該当する一罪が成立する。前段(暴行・脅迫による場合)と後段(13歳未満の者に対する場合)は排他的な関係にあるのではなく、重畳的な適用があり得る。
重要事実
被告人は、被害者が13歳未満であることを知りながら、その反抗を著しく困難にさせる程度の脅迫を用いてわいせつの行為に及んだ。原判決は、この行為について当時の刑法176条前段と後段の区別なく同条の一罪が成立すると判断し、被告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
被告人は13歳未満の者に対し、反抗を著しく困難にさせる程度の脅迫を用いている。これは同条前段の「脅迫」という手段要件を満たすとともに、被害者が13歳未満であることから同条後段の客体要件も満たしている。このように前段と後段の双方の要件を満たす態様の行為であっても、保護法益および行為の態様は共通することから、法律上は区別することなく一罪として成立すると解するのが相当である。
結論
13歳未満の者に対し、反抗を著しく困難にさせる程度の脅迫を用いてわいせつの行為をした場合には、刑法176条の一罪が成立する。
実務上の射程
法改正(不同意わいせつ罪への統合)後の実務においても、被害者が低年齢であることと強制手段を用いたことが重畳する場合、個別の号の選択よりも行為全体として一つの罪を構成するという判断枠組みとして参照し得る。特に観念的競合を検討する際などの基本的一罪性の判断に資する。
事件番号: 昭和22(れ)178 / 裁判年月日: 昭和23年2月7日 / 結論: 棄却
強姦致傷罪については告訴の取消があつても公訴棄却の判決をなすべきではない。