上告の理由があつて、當裁判所が原判決を破毀して自判する場合に限つて當裁判所は刑の執行猶豫の判決をすることができるのみである。しかるに、被告人は他に何等首肯するに足るような上告理由を述べず唯漫然と執行猶豫を求めているに過ぎないから、これでは上告適法の理由とはならない。
最高裁判所が刑の執行猶豫の判決をすることができる場合
刑訴法447條,刑訴法448條,刑法25條,刑訴應急措置法13條2項
判旨
上告審において刑の執行猶予の言渡しを求めることは、原判決を破棄して自判する場合にのみ可能であり、単に漫然と執行猶予を求めることは適法な上告理由にはならない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法上の適法な上告理由を主張することなく、単に刑の執行猶予を求めることが適法な上告理由として認められるか。
規範
最高裁判所が刑の執行猶予の判決をすることができるのは、適法な上告理由が存在することにより原判決を破棄して自判する場合に限られる。したがって、他の適法な上告理由を伴わずに、単に刑の執行猶予を求めること自体は、適法な上告理由を構成しない。
重要事実
被告人は、上告趣意書において自らの哲学体系や交響曲の創作背景、将来の理想実現への決意などを記述した上で、公判の結果として判決の執行猶予を期待する旨を主張した。しかし、刑事訴訟法上の具体的な上告理由(憲法違反や判例相反等)については何ら言及していなかった。
あてはめ
被告人の主張は、自己の精神状況や創作活動を回顧し、将来の理想実現を述べる中で、結局のところ刑の執行猶予の判決を求めるという点に帰着する。しかし、上告審において執行猶予を付すことができるのは、破棄自判という手続的要件を満たした場合に限定される。本件被告人は、執行猶予の希望を述べるのみで、他に首肯するに足りる具体的な上告理由を何ら述べていない。
結論
被告人の主張は適法な上告理由とはならないため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
上告理由が刑事訴訟法に規定された事由(憲法違反・判例違反等)に限定されることを確認する趣旨である。実務上、量刑不当を理由とする上告は原則として認められない(刑訴法411条2号等の例外を除く)が、本判決はそれ以前の段階として、単なる執行猶予の請願が独立した上告理由にならないことを明示している。
事件番号: 昭和25(れ)1783 / 裁判年月日: 昭和26年4月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる量刑不当の主張は、刑事訴訟法応急措置法13条2項に基づき、上告の適法な理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が刑事裁判の判決に対して上告を提起したが、その上告趣意の内容は、一審判決の刑の量定が不当であるという点に尽きていた。 第2 問題の所在(論点):被告人が主張する「量刑不当」の主張…