最高裁判所が「上告」と「訴訟法において特に定める抗告」とについて裁判權を有することは裁判所法第七條の明定するところであつて右にいわゆる「訴訟法において特に定める抗告」というのは、刑事々件については刑訴應急措置法第一八條に定める抗告のように、特に最高裁判所に申立てることを許された抗告をいい、たとえ高等裁判所のした決定又は命令に對する抗告であつても、このような特別の定めのないものは含まないものと解すべきである。
裁判所法第七條の法意
裁判所法7條,刑訴應急措置法18條
判旨
最高裁判所が裁判権を有する「訴訟法において特に定める抗告」とは、憲法適合性の判断不当を理由とする場合など、法律により特に最高裁判所への申立てが許されたものに限定される。
問題の所在(論点)
裁判所法7条が定める最高裁判所の権限のうち、「訴訟法において特に定める抗告」の範囲、および憲法判断の不当を理由としない抗告の適法性が問題となる。
規範
裁判所法7条にいう「訴訟法において特に定める抗告」とは、刑事事件においては刑事訴訟法の応急的措置に関する法律18条に定める抗告のように、特に最高裁判所に申立てることを許された抗告を指す。高等裁判所の決定等に対する抗告であっても、右のような特別の定めがないものは含まれない。
重要事実
抗告人は、詐欺や脅迫、検察官・弁護士の職務怠慢、偽証等により不当な有罪判決や民事判決を受けたと主張し、検察官らを告訴したが不起訴となったため、再審請求等に関連して抗告を申し立てた。しかし、当該抗告状には、原決定が憲法に適合するか否かの判断が不当であるといった、最高裁判所への特別抗告を基礎付ける具体的な憲法問題の指摘が含まれていなかった。
事件番号: 昭和26(し)61 / 裁判年月日: 昭和26年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所は、裁判所法7条に基づき、訴訟法等において特に最高裁判所に対してなし得ると定められた抗告についてのみ裁判権を有する。旧刑事訴訟法下の再審請求棄却決定に対する抗告棄却決定に対し、憲法違反を理由としない不服申立ては、適法な抗告として受理することはできない。 第1 事案の概要:広島高等裁判所が…
あてはめ
本件抗告が適法であるためには、刑事訴訟法の応急的措置に関する法律18条に基づき、「原決定において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについてした判断の不当であること」を理由とする必要がある。しかし、抗告人の主張は、事実関係の不当性や手続上の不備を訴えるのみであり、憲法適合性に関する判断の不当を理由とするものではないことが抗告状自体から明白である。したがって、本件抗告は法定の要件を満たさない。
結論
本件抗告は不適法であり、棄却を免れない。
実務上の射程
最高裁判所への抗告(特別抗告)の門戸が、憲法問題に限定されていることを示す。実務上、高裁の決定に対する不服申立てにおいて、単なる事実誤認や法令違反の主張だけでは最高裁の管轄に属さず、憲法違反または憲法解釈の誤りを構成する必要があることを強調する際に用いる。
事件番号: 昭和26(し)90 / 裁判年月日: 昭和26年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所は、裁判所法7条2号に基づき、法律が特に最高裁判所に抗告することを認めた場合に限り裁判権を有する。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てたが、当該抗告は法律において最高裁判所への申し立てが特別に認められている類型ではなかった。 第2 問題の所在(論点):最高裁判所が…
事件番号: 昭和62(し)45 / 裁判年月日: 平成2年10月17日 / 結論: 棄却
旧刑事訴訟法の下において有罪の確定判決を受けた事件に対する再審請求につき高裁がした決定に対し、刑訴応急措置法一八条により最高裁判所に申し立てられた特別抗告については、刑訴法四一一条三号は準用されない。
事件番号: 昭和26(し)102 / 裁判年月日: 昭和26年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所は、裁判所法7条2号に基づき、法律が特に認めた場合に限り抗告について裁判権を有する。本件抗告はこれに該当しないため、不適法として棄却されるべきである。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して本件抗告を申し立てた事案である。判決文上、抗告の対象となった原裁判の具体的な内容や、抗告人が…
事件番号: 昭和26(し)58 / 裁判年月日: 昭和26年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所は、訴訟法において特に認められた場合に限り抗告の裁判権を有し、高等裁判所の再審請求棄却決定に対して憲法違反を主張しない抗告は不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、福岡高等裁判所がなした再審請求棄却決定に対し、旧刑事訴訟法510条に基づいて最高裁判所に抗告を申し立てた。しかし、当該抗…