旧刑事訴訟法の下において有罪の確定判決を受けた事件に対する再審請求につき高裁がした決定に対し、刑訴応急措置法一八条により最高裁判所に申し立てられた特別抗告については、刑訴法四一一条三号は準用されない。
再審請求に関する刑事訴訟法応急措置法一八条の特別抗告と刑訴法四一一条三号の準用の有無
刑訴法411条,刑事訴訟法施行法2条,日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律18条
判旨
憲法は裁判権や審級制度の詳細を法律の定めに委ねており、旧法下の有罪判決に対する再審請求につき、最高裁判所への不服申立てを憲法判断等に限定する法規定は、合理的な理由があるため憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
旧法下の有罪確定判決に対する再審事件について、最高裁判所への不服申立てを憲法判断等に限定し、事実審理の機会を制限する法規定は、裁判を受ける権利(32条)や審級制度の趣旨に反し、憲法違反となるか。
規範
憲法は裁判権及び審級制度の具体的内容を法律の定めに一任している(憲法81条参照)。ただし、立法機関による制度設計は全くの自由ではなく、それなりに合理的な理由が必要とされる。最高裁判所の役割を憲法適合性の終局判断に集中させることや、覆審制度から事後審制度への移行に伴う経過措置として旧法を適用することは、合理的な理由に基づく制限として許容される。
重要事実
再審請求人は、旧刑事訴訟法下で有罪判決を受けた者である。原決定(控訴院の再審請求棄却決定)に対し、大審院への即時抗告という再度の事実審理の機会を奪い、不服申立てを最高裁判所への特別抗告(憲法違反等を理由とする場合に限定)のみに制限した裁判所法、刑訴応急措置法、刑訴法施行法の各規定が、裁判を受ける権利(憲法32条)や適正手続(31条)、平等権(14条)等に違反すると主張して抗告した事案である。
事件番号: 昭和22(つ)9 / 裁判年月日: 昭和23年2月17日 / 結論: 棄却
最高裁判所が「上告」と「訴訟法において特に定める抗告」とについて裁判權を有することは裁判所法第七條の明定するところであつて右にいわゆる「訴訟法において特に定める抗告」というのは、刑事々件については刑訴應急措置法第一八條に定める抗告のように、特に最高裁判所に申立てることを許された抗告をいい、たとえ高等裁判所のした決定又は…
あてはめ
まず、裁判所法7条が最高裁の裁判権を上告等に制限したのは、最高裁に付託された憲法的役割を全うさせる趣旨であり合理的である。次に、刑訴法施行法2条が旧法適用を維持したのは、覆審制(旧法)と事後審制(現行法)の混同を避けるための合理的な経過措置といえる。したがって、これらの規定が事実審理の機会を限定しているとしても、立法府の恣意によるものとはいえず、合理的な理由がある。また、旧法適用の原則からすれば、現行刑訴法428条2項や411条3号の準用も認められない。
結論
最高裁への不服申立てを限定する法規定は憲法に違反しない。また、旧法下の事件には現行法の救済規定は準用されず、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
審級制度の設計に関する立法裁量を広く認めた判例である。司法試験等の答案においては、裁判を受ける権利(32条)が必ずしも「特定の審級」や「複数回の事実審理」を保障するものではないことを論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 平成13(し)123 / 裁判年月日: 平成15年10月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審請求棄却決定に対する再度の事実審理(三審制)を設けないことは、立法政策の問題に過ぎず、憲法上の権利を侵害するものではない。 第1 事案の概要:抗告人が、高等裁判所のした再審請求棄却決定に対し、再度の事実審理を受ける機会を設けていない現行の裁判所法、刑訴応急措置法、刑訴法施行法の各規定が憲法41…
事件番号: 昭和54(し)94 / 裁判年月日: 昭和54年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有罪の確定判決に対しどの限度で再審請求を許すかは、もっぱら立法政策の問題であり、刑事訴訟法435条6号の規定が憲法31条、32条に違反することはない。 第1 事案の概要:有罪の確定判決を受けた被告人が、再審事由を規定する刑事訴訟法435条6号の文言ないし運用が憲法31条および32条に違反する旨を主…
事件番号: 昭和33(し)14 / 裁判年月日: 昭和33年5月27日 / 結論: 棄却
一 確定判決に対する再審を開始するか否かの手続は、憲法にいう「裁判の対審」に当たらない 二 刑訴法第四三五条第六号にいう「明らかな証拠」というのは証拠能力もあり証明力も高度のものをいい、被告人が弁護人に宛てた書信の如きを含まない 三 同条同号の「原判決において認めた罪より軽い罪」というのは法定刑の軽い罪をいい、心神耗弱…
事件番号: 昭和44(し)7 / 裁判年月日: 昭和47年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の本案事件(控訴審)を担当した裁判官が、同一事件の再審請求事件の抗告審に関与したとしても、憲法37条1項にいう「公平な裁判所」による裁判を妨げるものではない。 第1 事案の概要:申立人らは監禁・強要事件の被告人であった者であり、その控訴審判決が確定した後に再審請求を行った。本件再審請求事件の…