一 確定判決に対する再審を開始するか否かの手続は、憲法にいう「裁判の対審」に当たらない 二 刑訴法第四三五条第六号にいう「明らかな証拠」というのは証拠能力もあり証明力も高度のものをいい、被告人が弁護人に宛てた書信の如きを含まない 三 同条同号の「原判決において認めた罪より軽い罪」というのは法定刑の軽い罪をいい、心神耗弱の主張を含まない
一 再審を開始するか否かの手続は憲法にいう「裁判の対審」か 二 刑訴法第四三五条第六号の「明らかな証拠」の意義 三 同号の「原判決において認めた罪より軽い罪」の意義
憲法37条1項,憲法82条1項,刑訴法435条6号,刑訴法445条,刑法39条2号,刑訴規則283条
判旨
再審開始手続は憲法37条1項の「裁判の対審」には当たらない。また、刑訴法435条6号の「明らかな証拠」は証拠能力と高度な証明力を要し、「軽い罪」には心神耗弱による減軽を含まない。
問題の所在(論点)
1. 再審開始手続に憲法37条1項の公開裁判の原則が適用されるか。2. 被告人の否認の書信は刑訴法435条6号の「明らかな証拠」に当たるか。3. 心神耗弱による減軽の主張は「原判決において認めた罪より軽い罪」に含まれるか。
規範
1. 再審開始手続は確定判決の効力を覆すための厳格な手続であり、憲法37条1項にいう「裁判の対審(公開の裁判)」には該当しない。2. 刑訴法435条6号の「明らかな証拠」とは、証拠能力を有し、かつ確定判決の事実認定を覆すに足りる高度な証明力を有する証拠を指す。3. 同号の「原判決において認めた罪より軽い罪」とは、法定刑が軽い犯罪を指し、心神耗弱による刑の減軽はこれに含まれない。
重要事実
被告人が、確定判決に対して再審請求を行った事案である。再審の理由として、弁護人宛に事件を否認する旨を記した書信を「明らかな証拠」として提出したほか、心神耗弱による刑の減軽(「軽い罪」への該当)を主張した。また、再審開始手続が非公開で行われることが憲法37条1項(公開裁判の原則)に反すると主張して特別抗告を行った。
事件番号: 昭和43(し)34 / 裁判年月日: 昭和43年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法433条に基づく特別抗告において、実質的に単なる訴訟法違反を主張するものは、同条所定の抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人が刑事訴訟法433条に基づき特別抗告を申し立てた事案。抗告人はその理由として憲法違反を主張していたが、その主張の実質は訴訟法違反を指摘するものであった。…
あてはめ
1. 再審開始手続は公判そのものではなく、対審には当たらないため、非公開で行っても憲法違反ではない。2. 被告人の書信は、内容が単なる否認であり、証拠能力の点でも証明力の点でも高度なものとはいえず、「明らかな証拠」とは認められない。3. 判例の趣旨に照らせば、「軽い罪」とは法定刑の軽重で決まるものであり、責任能力の減退(心神耗弱)による減軽はこれに該当しない。
結論
本件再審請求を棄却した原判断に違法はなく、特別抗告は棄却されるべきである。
実務上の射程
再審請求手続の法的性質と、刑訴法435条6号の各要件(証拠の明白性・軽い罪の意義)を画定した重要判例である。特に「軽い罪」に法律上の減軽が含まれない点は、答案作成上の基礎知識として押さえておくべきである。
事件番号: 昭和54(し)94 / 裁判年月日: 昭和54年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有罪の確定判決に対しどの限度で再審請求を許すかは、もっぱら立法政策の問題であり、刑事訴訟法435条6号の規定が憲法31条、32条に違反することはない。 第1 事案の概要:有罪の確定判決を受けた被告人が、再審事由を規定する刑事訴訟法435条6号の文言ないし運用が憲法31条および32条に違反する旨を主…
事件番号: 昭和29(し)23 / 裁判年月日: 昭和29年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張していても、その実質が再審請求の理由の有無を争うものである場合は、刑事訴訟法405条所定の適法な上告(特別抗告)理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、再審請求を棄却した決定に対して特別抗告を申し立てた。その際、憲法違反を理由として掲げていたが、具体的趣旨の内容は、本件再審…
事件番号: 昭和63(し)124 / 裁判年月日: 平成3年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審請求における「無罪を言い渡すべき明確な証拠」の該否判断は事実認定の問題であり、これを憲法違反や判例違反と強弁しても、特別抗告の適法な理由には当たらない。 第1 事案の概要:申立人らは、旧刑訴法下での有罪確定判決に対し再審を請求した。その際、警察官による拷問の事実を肯定した別事件(特別公務員暴行…
事件番号: 昭和43(し)89 / 裁判年月日: 昭和43年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審請求において、刑訴法435条各号に該当する事由が認められない場合には、請求を棄却した原決定は正当であり、憲法32条違反等の主張は前提を欠く。 第1 事案の概要:抗告人は、確定判決に対して再審を申し立てたが、原決定により棄却された。これに対し、抗告人は、憲法31条(適正手続き)、32条(裁判を受…