交通事故の被害者が、加害者として取調べを受けたうえ業務上過失致死傷罪で起訴され、一審で有罪判決を受けたものの二審で無罪判決を受け、同判決が確定したなど、原判示の事情のもとにおいては、被害者に対する右無罪判決が確定した時をもつて、民法七二四条にいう「加害者ヲ知リタル時」というべきである。
民法七二四条にいう「加害者ヲ知リタル時」の認定事例
民法724条
判旨
不法行為の加害者が刑事裁判で犯罪事実を否認している等の事情がある場合、民法724条の「加害者を知りたるとき」とは、当該加害者に対する無罪判決が確定した時を指すと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
民法724条(旧法)の消滅時効の起算点に関し、刑事裁判で犯行を否認していた加害者についての「加害者を知りたるとき」はいつか。
規範
民法724条前段(現行法724条1号)にいう「加害者を知りたるとき」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求が客観的に可能な程度に、加害者の住所・氏名のみならず、その行為が不法行為を構成することを確実かつ具体的に認識し得る状態になった時をいう。
重要事実
昭和48年4月15日に交通事故が発生した。被疑者として取り調べを受けたBは、業務上過失致死傷罪で起訴され、一審では禁錮1年6月執行猶予3年の有罪判決を受けた。しかし、Bは控訴し、東京高裁において昭和53年2月27日に無罪判決が言い渡され、同年3月14日に当該判決が確定した。上告人(被害者側)が損害賠償請求を提起した際、消滅時効の起算点となる「加害者を知りたるとき」がいつかが争点となった。
あてはめ
本件において、被上告人Bは事故直後から被疑者として取り調べを受けていたが、刑事裁判において一貫して過失を否定していた。一審では有罪とされたものの、控訴審で事実関係が再検討された結果、無罪判決が下されている。このような複雑な訴訟経過に鑑みれば、判決が確定するまでは、被害者がBを法的責任を負うべき「加害者」として確実かつ具体的に認識することは困難であったといえる。したがって、無罪判決の確定をもって、被害者が加害者を認識したものと評価するのが相当である。
結論
被上告人Bに対する無罪判決が確定した昭和53年3月14日をもって「加害者を知りたるとき」にあたると解される。
実務上の射程
本判決は、刑事手続きが民事上の賠償請求の認識に影響を与える特殊な事例における判断であり、原則として事故発生時(または犯人判明時)とする実務原則の例外を示すものである。答案上では、加害者が否認を続けており事実関係が混迷している事案において、被害者の法的救済の観点から起算点を後ろ倒しにする論拠として活用できる。
事件番号: 昭和56(オ)1284 / 裁判年月日: 昭和57年10月15日 / 結論: 棄却
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