満九歳の小学生がa城の外堀に転落して溺死した事故につき、外堀に沿つて設置された高さ約一・二メートルの生垣が事故現場の西方約二五メートル、東方約二八メートルまでしかなく、また、外堀に沿つて設置された高さ一メートルの棒杭に有刺鉄線を張つた柵が右生垣の東端から東方にはところどころに残存しているにすぎないため、事故現場付近では自由に外堀の縁まで近付きうる状況にあつても、外堀付近が特別史跡に指定されており、事故は右小学生が水面から約二メートルの高さの垂直の石垣を降りて下方でザリガニを取つたのち石垣を登ろうとして足を滑らせたために起きたなど原判示の事実関係のもとにおいては、本件外堀の設置管理に瑕疵があるとはいえない。
満九歳の小学生が堀に転落して溺死した事故につき堀の設置、管理に瑕疵がないとされた事例
国家賠償法2条1項
判旨
公の営造物の設置又は管理の瑕疵の有無は、当該営造物の構造や場所的環境等の諸般の事情に照らし、通常予測される事故を防止するための設備として、既存の設備で足りるか否かによって判断される。
問題の所在(論点)
観光地かつ特別史跡である公園の石垣において、既存の柵や生垣を超えた防護設備が設置されていないことが、国家賠償法2条1項の「設置又は管理の瑕疵」に当たるか。
規範
国家賠償法2条1項にいう「設置又は管理の瑕疵」とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、その有無は、当該営造物の構造、場所的環境、利用状況等の諸般の事情を総合的に考慮し、通常予測される危険に対し、客観的に相当な防止措置が講じられていたか否かによって判断すべきである。
重要事実
被害者Dは、特別史跡に指定されているa城跡(a城公園)内の石垣から、本件外濠へ転落した。当該場所は特別史跡としての場所的環境を有しており、転落防止用として本件の柵およびウバメガシの生垣が設置されていたが、Dの無軌道な行動を直接的に封じるほど強固なものではなかった。
あてはめ
本件外濠及び石垣は特別史跡という特殊な「場所的環境」にあり、景観保護の要請も認められる。このような環境下において「通常予測される」入園者の不用意な転落事故を防止するための設備としては、既存の柵や生垣をもって「客観的に相当な防止措置」として足りるというべきである。Dの転落は、これら設備を前提とすれば「無軌道な行動」に起因するものと評価され、通常予測される範囲内の事故とはいえない。
結論
本件外濠の設置、管理又は保存に瑕疵があるとは認められず、被告は国家賠償法2条1項に基づく損害賠償責任を負わない。
実務上の射程
営造物の安全性を検討する際、単に事故が発生した事実のみならず、営造物の本来の目的や場所的環境(史跡としての価値等)を考慮し、通常予測される利用態様を基準に判断すべきことを示す射程を有する。答案では、被害者の行動が異常なものである場合に、管理者の義務を限定する論理として活用できる。
事件番号: 昭和53(オ)854 / 裁判年月日: 昭和53年12月22日 / 結論: 棄却
本件事故現場における本件用水溝は、その護岸壁の高さや水深(原判示参照)からいつて通常の幼児や成人にとつてその生命、身体に危険を生じさせるものではなく、このような営造物については、本件被害者のような一年七月程度の乳幼児が保護者の監護を離れたために生ずべき事故をも防止しうるような措置が講じられていなくても、その管理に瑕疵が…