県道上に道路管理者の設置した掘穿工事中であることを表示する工事標識板、バリケード及び赤色灯標柱が倒れ、赤色灯が消えたままになつていた場合であつても、それが夜間、他の通行車によつて惹起されたものであり、その直後で道路管理者がこれを原状に復し道路の安全を保持することが不可能であつたなど判示の事実関係のもとでは、道路の管理に瑕疵がなかつたというべきである。
県道上に工事標識板赤色灯標柱などが倒れ赤色灯が消えたままであつても道路の管理に瑕疵がないとされた事例
国家賠償法2条1項,道路法15条,道路法42条1項
判旨
道路の設置管理の瑕疵は、客観的に道路の安全性が欠如している場合であっても、それが事故直前の第三者の行為により生じたものであり、管理者において原状回復が時間的に不可能であったときは、その瑕疵が否定される。
問題の所在(論点)
第三者の行為によって公の営造物の安全性に欠如が生じた直後に事故が発生した場合、管理者による「管理の瑕疵」(国家賠償法2条1項)を認めることができるか。管理者の時間的・回避的可能性の有無が問われる。
規範
国家賠償法2条1項にいう「設置又は管理に瑕疵」があるとは、公の営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態をいう。もっとも、本来備えるべき安全性が欠如している状態が生じたとしても、その発生が予期せぬ第三者の行為等によるものであり、かつ、管理者において遅滞なく原状に復し、安全良好な状態を保つことが時間的に不可能であった場合には、管理の瑕疵を認めることはできない。
重要事実
県道の掘削工事現場において、管理者は工事標識板、バリケード、赤色灯標柱を設置して安全確保に努めていた。しかし、昭和41年9月6日午後10時30分頃に発生した本件事故の直前、先行車がこれらをなぎ倒したため、バリケード等が倒れ赤色灯が消灯した状態となった。その後、短時間を置いて本件事故が発生した。
あてはめ
本件では、バリケード等の倒壊により道路の安全性が一時的に損なわれていたといえる。しかし、この状態は夜間に先行車両が引き起こしたものであり、事故はその「直前」に発生している。このような状況下では、管理者である被上告人が倒壊を覚知して遅滞なく原状に復することは時間的に不可能であったと評価される。管理者が講ずべき回避措置を取る時間的余裕がない以上、管理義務に違反したとはいえない。
結論
被上告人の道路管理に瑕疵があったとは認められない。したがって、国家賠償法2条1項に基づく損害賠償責任は成立しない。
実務上の射程
営造物の物理的状態に欠陥があっても、管理者の時間的・場所的支配の及ばない範囲で生じた不安全な状態については、瑕疵を否定する限定を付したものである。答案上は、まず客観的な安全性の欠如を指摘した上で、予見可能性・回避可能性(原状回復の困難性)の観点から瑕疵を否定するロジックとして用いる。
事件番号: 昭和42(オ)921 / 裁判年月日: 昭和45年8月20日 / 結論: 棄却
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