幅員七・五メートルの国道の中央線近くに故障した大型貨物自動車が約八七時間駐車したままになつていたにもかかわらず、道路管理者がこれを知らず、道路の安全保持のために必要な措置を全く講じなかつた判示の事実関係のもとにおいては、道路の管理に瑕疵があるというべきである。
国道上に駐車中の故障した大型貨物自動車を約八七時間放置していたことが道路管理の瑕疵にあたるとされた事例
国家賠償法2条1項,国家賠償法3条1項,道路法13条1項,道路法42条1項
判旨
道路管理者は、道路を常時良好な状態に保ち一般交通の支障を及ぼさないよう努める義務を負う。交通量の多い幹線道路において、故障車が約87時間もの長時間放置され、その間、看視体制の不備から適切な措置を講じなかった場合には、国家賠償法2条1項の「設置又は管理の瑕疵」が認められる。
問題の所在(論点)
第三者の放置した故障車によって道路の安全性が損なわれている場合において、道路管理者がその事実を認識せず、かつ回避措置を講じなかったことが、国家賠償法2条1項の「管理の瑕疵」に当たるか。
規範
国家賠償法2条1項の「設置又は管理の瑕疵」とは、公の営造物がその本来備えゆべき安全性を欠いている状態をいう。道路管理者は、道路法42条に基づき、道路を常時良好な状態に保ち、一般交通に支障を及ぼさないように維持・修繕すべき義務を負う。したがって、第三者の行為により危険な状態が生じた場合であっても、道路管理者がこれを看視し、適切に応急措置(バリケード設置や通行止め等)を講じ得る体制を整えていなかったために、当該危険状態が長時間放置されたときは、管理の瑕疵が認められる。
重要事実
大型貨物自動車が故障し、幅員7.5メートルの交通量の多い幹線道路(国道170号線)の道路中央線付近に、道路に平行でない不適切な状態で約87時間にわたって放置された。管理担当の土木出張所にはパトロール車の配置がなく、常時巡視も行われていなかったため、本件事故が発生するまで故障車の存在を把握していなかった。その結果、安全確保のための措置(バリケード設置等)も一切講じられていなかったところ、原動機付自転車が当該車両に激突し、運転者が死亡した。
あてはめ
本件道路は交通量の多い幹線道路であり、道路中央付近に故障車が放置された状態は「道路の安全性を著しく欠如する状態」であったといえる。管理者は常時巡視して応急事態に対処し得る看視体制をとっておらず、約87時間もの長時間にわたり故障車の存在すら把握していなかった。このような管理体制の不備により、バリケード設置等の「道路の安全性を保持するために必要とされる措置」を全く講じなかったことは、管理上の義務に違反する。警察官による道路交通法上の規制権限があることは、道路管理者の右義務を免除する理由にはならない。
結論
本件事故当時、道路の管理に瑕疵があったというほかなく、費用負担者である国は国家賠償法2条1項、3条1項に基づき損害賠償責任を負う。
実務上の射程
第三者の行為(不法占拠や落下物等)による事故について、管理者の過失を問わず「客観的な安全性の欠如」として瑕疵を認める際のリーディングケースである。特に、瑕疵の有無を判断するにあたって「瑕疵の状態が継続した時間」と「管理者の看視体制(巡視頻度等)」を重視する実務上の判断枠組みを示している。
事件番号: 昭和42(オ)921 / 裁判年月日: 昭和45年8月20日 / 結論: 棄却
一、国道に面する山地の上方部分が崩壊し、土砂とともに落下した直径約一メートルの岩石が、たまたま該道路を通行していた貨物自動車の運転助手席の上部にあたり、その衝撃により、助手席に乗つていた者が即死した場合において、従来右道路の付近ではしばしば落石や崩土が起き、通行上危険があつたにもかかわらず、道路管理者において、「落石注…