いわゆるみなし法人課税制度について定めた租税特別措置法二五条の二の規定は、個人の事業税の課税標準の算定にあたり準用されない。
個人の事業税の課税標準の算定と租税特別措置法二五条の二の規定の準用の有無
地方税法72条の17第1項,租税特別措置法25条の2
判旨
個人事業税の課税標準の算定において、租税特別措置法のみなし法人課税の規定は準用されない。同規定は、所得税額の計算方法の特例を定めたものであり、所得税法上の所得金額の計算方法そのものを変更する規定ではないからである。
問題の所在(論点)
個人事業税の課税標準を算定する際、地方税法72条の17第1項本文の「所得税法の計算の例」によって、租税特別措置法25条の2(みなし法人課税)の規定が準用されるか。
規範
地方税法72条の17第1項本文が規定する「所得税法26条及び27条に規定する不動産所得及び事業所得の計算の例」とは、所得金額そのものの算定方法を指す。一方、租税特別措置法(昭和53年改正前)25条の2(みなし法人課税)は、算出された所得金額を前提に、所得税額の算定上、法人所得相当分と個人所得相当分に区分して課税する税額計算の特例にすぎない。したがって、同規定は個人事業税の課税標準の算定には準用されない。
重要事実
青色申告者である個人事業主(上告人)に対し、個人事業税の賦課処分がなされた。上告人は、所得税において租税特別措置法25条の2に基づく「みなし法人課税」を選択していた。上告人は、個人事業税の課税標準を算定する際にも、同条が準用され、事業主報酬等の額が控除されるべきであると主張して、賦課処分の取消しを求めて争った。
事件番号: 昭和58(行ツ)102 / 裁判年月日: 昭和59年2月27日 / 結論: 棄却
一 地方税法七二条の五一第一項ただし書にいう「特別の事情」には、東京都都税条例三〇条ただし書にいう「課税洩れ」が含まれる。 二 東京都都税条例三〇条ただし書にいう「課税洩れ」には、納税者の責に帰することのできない事由による賦課もれの場合も含まれる。
あてはめ
地方税法上、個人事業税の課税標準は前年の事業所得等に基づき、所得税法の計算例によるとされる。しかし、みなし法人課税の規定は、個人事業主が法人と同様の課税を受けられるよう、算出された所得を「みなし法人所得額」と「事業主報酬の額」に分ける税額計算上の措置にすぎない。これは所得税法上の所得金額の計算方法自体の規定ではないため、地方税法が参照する「計算の例」には含まれないと解される。
結論
個人事業税の算定にみなし法人課税の規定は準用されず、事業主報酬額を控除することはできない。賦課処分は適法である。
実務上の射程
租税法における「所得の計算」と「税額の計算」の区別を明確にした判例である。地方税法が所得税法の規定を引用する場合、それが所得概念(課税標準)に関するものか、政策的な税額軽減措置(税額控除等)に関するものかを峻別して論じる必要がある。答案上は、安易な準用を否定する際の論拠として有用である。
事件番号: 昭和55(行ツ)67 / 裁判年月日: 昭和56年6月25日 / 結論: 棄却
地方税法二四条の五第一項三号、二九五条一項三号にいう老年者の「所得の金額」を算定するに当たつて当該老年者の受給した公的年金等の収入金額から租税特別措置法(昭和五四年法律第一五号による改正前のもの)二九条の三所定の老年者年金特別控除額を控除すべきではない。
事件番号: 昭和44(行ツ)22 / 裁判年月日: 昭和49年5月30日 / 結論: 棄却
旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)一三条一項二号は、法人が合併した場合の清算所得中には、合併の場合に合併法人が納付する被合併法人の清算所得に対する法人税額、その法人税額に係る道府県民税額及び市町村民税額並びに清算所得に対する事業税額に相当する金額を含む趣旨を定めたものと解すべきである。
事件番号: 平成18(行ヒ)295 / 裁判年月日: 平成19年7月6日 / 結論: その他
納税者が平成12年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,納税者が同権利行使益を一時所得として申告し,同権利…
事件番号: 平成6(行ツ)215 / 裁判年月日: 平成7年4月28日 / 結論: 棄却
納税者が、三箇年にわたり、株式等の売買による多額の雑所得を申告すべきことを熟知しながら、確定的な脱税の意思に基づき、顧問税理士の質問に対して右所得のあることを否定し、同税理士に過少な申告を記載した確定申告書を作成させてこれを提出したなど判示の事実関係の下においては、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在しない…