公共企業体等労働委員会は、不当労働行為の成立が認められる場合であつても、それによつて生じた状態が既に是正され、正常な集団的労使関係秩序が回復されているときは、救済の必要性がないものとして、救済申立てを棄却することができる。
不当労働行為の成立が認められる場合に救済申立てを棄却することの可否
公共企業体等労働関係法25条の5,労働組合法27条
判旨
使用者の言論が不当労働行為(支配介入)に該当するかは、言論の自由を前提としつつ、発言時期、場所、対象者、内容等を総合考慮して判断される。また、無許可の施設利用は特段の事情がない限り正当な組合活動とはいえず、是正後の不当労働行為には救済の必要性が否定される。
問題の所在(論点)
1. 使用者(局長)の発言が労働組合法7条3号の「支配介入」に該当するか。 2. 無許可の職場集会に対する解散命令が不当労働行為に該当するか(組合活動の正当性)。 3. 既に事態が改善・是正された場合において、労働委員会の救済命令を発する「救済の必要性」が認められるか。
規範
1. 使用者の言論は、原則として言論の自由(憲法21条1項)により保障されるが、労働者の団結権との関係で、公正かつ妥当な範囲を逸脱し、労使関係の秩序を乱す場合は支配介入(労働組合法7条3号)となり得る。 2. 使用者の施設管理権の下にある施設を無許可で利用する組合活動は、施設管理権の濫用と認められるような「特段の事情」がない限り、正当な組合活動には当たらない。 3. 労働委員会の救済命令制度は、使用者への懲罰ではなく正常な集団的労使関係の回復を目的とするため、不当労働行為があったとしても、事態が是正され正常な秩序が回復された場合には「救済の必要性」が失われる。
重要事実
上告人組合(全逓)に対立する新組合の結成準備がなされていた時期、新宿郵便局長が自宅や執務室に特定の職員を呼び出し、組合活動等について発言した。また、組合員らが局内の休憩室や分室付近で無許可の職場集会を開催したところ、局次長らが解散命令を発した。さらに、不当な掲示物の撤去等についても、既に是正措置がなされた後の救済申立てが問題となった。
事件番号: 昭和63(行ツ)157 / 裁判年月日: 平成元年12月11日 / 結論: その他
一 いわゆるチェック・オフは、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)二四条一項但書の要件を具備しない限り、これをすることができない。 二 使用者が過去一五年余にわたってしてきたいわゆるチェック・オフを中止した場合において、当時労働組合から脱退者が続出して、労働組合が当該事業場の従業員の過半数で組織されて…
あてはめ
1. 局長の発言は、新組合結成という対立的な時期に、自宅や執務室という個別的な接触の場で行われたものであり、妥当性に疑いがある。しかし、その内容や事実関係を総合すれば、直ちに組合の結成運営に対する支配介入に至るほどの影響力を有するものとはいえない。 2. 本件職場集会は、使用者の許諾なく休憩室等で行われたものであり、管理権の濫用といえるような特段の事情も認められない。したがって、施設管理権を侵害し企業秩序を乱す正当性を欠く活動であり、解散命令は正当な業務命令であって不当労働行為ではない。 3. 本件掲示物の撤去等に関しては、申立て時において既に状態が是正されており、正常な労使関係が回復している。本制度は懲罰目的ではないため、重ねて命令を発する現実的必要性がない。
結論
局長の発言は支配介入に当たらず、無許可集会への解散命令も不当労働行為を構成しない。また、是正済みの事案について救済の必要性を否定した原審の判断は正当である。
実務上の射程
使用者の言論の自由と支配介入の境界線を示す重要判例である。答案上では「発言の態様(個別面談か等)」「時期(組合分裂時か等)」「内容(威圧的か等)」を相関的に考慮する枠組みとして活用する。また、施設管理権と組合活動の関係については「特段の事情」の有無が判断の分水嶺となる。
事件番号: 平成3(行ツ)155 / 裁判年月日: 平成6年12月20日 / 結論: その他
一 私立学校の職員室内で、教職員が使用者の許可を得ないまま組合活動としてビラの配布をした場合において、右ビラが労働組合としての日ごろの活動状況等を内容とするもので、違法不当な行為をあおり又はそそのかすこと等を含むものではなく、右配布の態様も、就業時間前の通常生徒が職員室に入室する頻度の少ない時間帯にビラを二つ折りにして…
事件番号: 昭和54(行ツ)85 / 裁判年月日: 昭和58年2月24日 / 結論: 棄却
夏季一時金の算定の基礎となる出勤率を計算する場合にストライキによる不就労を欠勤と扱うべきか否かについて労使間の合意や慣行は成立していなかつたが、組合がはじめてストライキを実施したところ、使用者は右ストライキによる不就労を通常の欠勤と同一に取り扱つたなど判示の事実関係のもとにおいては、使用者の右措置は労働組合法七条一号の…
事件番号: 平成16(行ヒ)50 / 裁判年月日: 平成18年12月8日 / 結論: 破棄差戻
1 労働組合法2条1号所定の使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者が使用者の意を体して労働組合に対する支配介入を行った場合には,使用者との間で具体的な意思の連絡がなくとも,当該支配介入をもって使用者の不当労働行為と評価することができる。 2 労使協調路線を採るA労働組合の組合員である新幹線運転所の指導科長(助…
事件番号: 昭和27(オ)1053 / 裁判年月日: 昭和29年5月28日 / 結論: 棄却
一 不当労働行為に対する労働委員会の救済命令書には認定事実の記載がなければならない旨の中央労働委員会規則第四三条第二項の法意は、必ずしも、命令書中「認定した事実」と題する項目中に認定事実の記載がなければならないとする趣旨ではなく、主文を含む命令書の記載全体の中に主文を理由づけるに足りる事実理由の記載があれば足りる趣旨と…