一 いわゆるチェック・オフは、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)二四条一項但書の要件を具備しない限り、これをすることができない。 二 使用者が過去一五年余にわたってしてきたいわゆるチェック・オフを中止した場合において、当時労働組合から脱退者が続出して、労働組合が当該事業場の従業員の過半数で組織されているかどうか極めて疑わしく、かつ、右チェック・オフについては書面による協定がなかったなど判示のような事実関係の下では、右中止は、労働組合法七条三号の不当労働行為には該当しない。 (一、二につき反対意見がある。)
一 いわゆるチェック・オフと労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)二四条一項 二 いわゆるチェック・オフの中止が労働組合法七条三号の不当労働行為に該当しないとされた事例
労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)24条1項,労働組合法7条3号
判旨
労働時間内や無断での施設利用を伴う組合活動は原則として正当性を欠き、これに対する警告は不当労働行為(支配介入)に該当しない。また、労基法24条1項の要件を欠くチェック・オフの中止も、特段の事情がない限り不当労働行為には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 労働時間内かつ無断の施設利用を伴う職場集会に対する警告が、支配介入の不当労働行為に該当するか。2. 労基法24条1項の要件を欠く状態で行われていたチェック・オフの中止が、支配介入の不当労働行為に該当するか。
規範
1. 労働者は労働時間中、職務にのみ従事すべき義務を負うため、労働時間中の組合活動は原則として正当性を欠く。2. 使用者の許諾なく企業の物的施設を利用する組合活動は、施設管理権を侵害し企業秩序を乱すものであり、利用を許さないことが権利濫用となる特段の事情がない限り正当性を欠く。3. チェック・オフは、賃金全額払いの原則(労基法24条1項)に基づき、過半数組合等との書面による協定を要し、これら要件を欠く状態の是正としての中止は原則として不当労働行為を構成しない。
事件番号: 昭和61(行ツ)56 / 裁判年月日: 平成元年1月19日 / 結論: 棄却
使用者がその企業内に併存する甲乙二つの労働組合との間の組合掲示板貸与に関する交渉に当たり、両組合に対して同一の貸与条件を提示し、これを受け入れた甲組合に対しては組合掲示板を貸与し、これを拒否した乙組合に対してはその貸与を拒否した場合において、乙組合に対して組合掲示板の貸与を拒否した使用者の行為は、右貸与条件の内容が、掲…
重要事実
病院(上告人)の看護婦らが組織する組合(G組合)は、勤務表の変更や賃上げ交渉に関し、病院の許可なく、かつ労働時間中に食い込む形で職場集会を行った。これに対し病院は「警告並びに通告書」を交付した。また、病院は長年書面協定なくチェック・オフを実施していたが、組合員数の減少や資格への疑義を理由に、一方的にこれを中止した。労働委員会はこれらを支配介入の不当労働行為(労組法7条3号)と認定し、救済命令を発したため、病院がその取消しを求めて提訴した。
あてはめ
1. 職場集会について、組合側に利用権限はなく、使用者の受忍義務も認められない。病院が従来黙認していたとしても直ちに黙示の許諾とはいえず、警告は義務違反や企業秩序の乱れを是正するものにすぎないため、支配介入には当たらない。2. チェック・オフについて、本件では過半数代表性の疑義があり、かつ書面協定も存在しなかった。中止は労基法24条1項違反の解消を目的とするものであり、不当労働行為意思に基づくものともいえないから、支配介入には当たらない。
結論
本件警告及びチェック・オフの中止は、いずれも不当労働行為には該当しない。したがって、これらを不当労働行為とした再審査命令は違法であり、取り消されるべきである。
実務上の射程
職場内での組合活動(施設利用・時間内活動)の正当性を判断する際のリーディングケースである。特に施設利用については「権利濫用となる特段の事情」の有無がポイントとなるが、判例はこれを極めて厳格に解しており、答案上は原則として「正当性なし」と導く際の論拠となる。チェック・オフについても、労基法の要件を厳格に要求する実務の指針となっている。
事件番号: 昭和60(行ツ)1 / 裁判年月日: 昭和63年7月19日 / 結論: 棄却
労働組合が、組合活動のため使用者の施設を自由に使用することができるとの見解のもとに、従業員食堂の使用につき使用者と真摯な協議を尽くさず、使用者の許諾を得ないまま実力を行使してこれを使用し続けてきた場合において、使用者が、労働組合からの従業員食堂の使用申入れを許諾しなかつたこと、また、許諾のないまま従業員食堂において開か…
事件番号: 昭和55(行ツ)101 / 裁判年月日: 昭和58年12月20日 / 結論: 棄却
公共企業体等労働委員会は、不当労働行為の成立が認められる場合であつても、それによつて生じた状態が既に是正され、正常な集団的労使関係秩序が回復されているときは、救済の必要性がないものとして、救済申立てを棄却することができる。
事件番号: 平成3(行ツ)34 / 裁判年月日: 平成7年9月8日 / 結論: その他
一 使用者が、労働組合の結成通知以来約九箇月にわたり、組合からの許可願の提出があれば業務に支障のない限り従業員食堂の使用を許可していたところ、就業時間後食堂で行われていた組合の学習会の参加者の氏名を巡回中の守衛が記録したことに反発した組合執行委員長らが右記録用紙を守衛から提出させたことを契機として、組合による食堂使用を…
事件番号: 昭和57(行ツ)50 / 裁判年月日: 昭和62年5月8日 / 結論: 棄却
使用者がその企業内に併存する甲乙二つの労働組合のうち多数派の甲組合に対して組合事務所等を貸与しながら、少数派の乙組合に対しては専従者の職場復帰問題の解決が先決であることなどを理由にその貸与を拒否している場合において、甲組合との間では貸与に際し特段の条件を付したり前提となる取引を行つたりしておらず、右職場復帰問題は組合事…