一 使用者が、労働組合の結成通知以来約九箇月にわたり、組合からの許可願の提出があれば業務に支障のない限り従業員食堂の使用を許可していたところ、就業時間後食堂で行われていた組合の学習会の参加者の氏名を巡回中の守衛が記録したことに反発した組合執行委員長らが右記録用紙を守衛から提出させたことを契機として、組合による食堂使用を拒否したのに対し、組合が、使用者が食堂に施錠するまで五箇月近くの間、無許可で食堂の使用を繰り返し、その間、使用者は食堂の使用に関し施設管理者の立場からは合理的理由のある提案をしたが、これに対する組合の反対提案は組合に食堂の利用権限があることを前提とするかのような提案であったなど判示の事実関係の下においては、使用者が組合に対し組合集会等のための食堂の使用を許諾しない状態が続いていることをもって、不当労働行為に当たるということはできない。 二 使用者が、労働組合に労働基準法三六条所定の協定の締結適格があるかどうかを確認するため、従業員に対し記名式の照会票を配付し、組合加入の有無を調査した場合において、使用者は、労働基準監督署から従業員代表との間で締結された現行協定の適法性に疑義があるとして時間外労働の中止を指示され、早急に新たな協定を適法に締結する必要に迫られており、他方、組合は、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合であると主張して協定の締結を要求しながら、右要件を確認するための組合員名簿の提出は拒否し続けていたなど判示の事実関係の下においては、使用者が右調査をしたことは、不当労働行為に当たらない。 (一、二につき反対意見がある。)
一 使用者が労働組合に対し組合集会等のための従業員食堂の使用を許諾しない状態が続いていることをもって不当労働行為に当たるということはできないとされた事例 二 使用者が労働組合にいわゆる三六協定の締結適格があるかどうかを確認する目的で従業員に記名式の照会票を配付して組合加入の有無を調査したことが不当労働行為に当たらないとされた事例
労働組合法7条3号,労働基準法36条
判旨
企業施設内での無許可の組合活動は、施設管理権の濫用となる特段の事情がない限り正当性を欠き、その拒否は不当労働行為にならない。また、三六協定締結等の必要性から、不利益を示唆せず記名式で組合加入状況を調査する行為も、支配介入には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 組合事務所未設置等の状況下で、使用者が食堂の利用を一切不許可としたことが、施設管理権の濫用として不当労働行為(支配介入)を構成するか。 2. 三六協定締結の必要性を理由に、記名式で組合加入状況を調査したことが、支配介入に該当するか。
規範
事件番号: 昭和60(行ツ)1 / 裁判年月日: 昭和63年7月19日 / 結論: 棄却
労働組合が、組合活動のため使用者の施設を自由に使用することができるとの見解のもとに、従業員食堂の使用につき使用者と真摯な協議を尽くさず、使用者の許諾を得ないまま実力を行使してこれを使用し続けてきた場合において、使用者が、労働組合からの従業員食堂の使用申入れを許諾しなかつたこと、また、許諾のないまま従業員食堂において開か…
1. 組合による企業施設の利用は、原則として使用者との合意に基づくべきであり、使用者が利用を受忍すべき義務を負うものではない。無許可利用は、不許可が施設管理権の濫用と認められる特段の事情がない限り、正当な組合活動に当たらない。 2. 使用者が労働者の組合加入の有無を調査する行為は、組合員への具体的な不利益を示唆して動揺を与える目的がある等の特段の事情がない限り、直ちに労働組合法7条3号の支配介入には当たらない。
重要事実
精密小型モーター製造会社の上告人と、結成間もない労働組合(組合)との間で対立が生じた。組合が守衛の業務記録用紙を取り上げた「E守衛事件」を機に、上告人は従来認めていた食堂の組合利用を拒否。組合は「会場使用届」を一方的に出し無許可使用を5ヶ月継続した。上告人は一定の条件下での利用を提案したが、交渉は決裂した。また、三六協定が従業員代表の適格性を理由に是正勧告を受けたため、上告人は協定締結相手を確認すべく、組合に名簿提出を求めたが拒否された。そこで上告人は、全従業員に対し記名式の「照会票」を配布し、組合加入の有無を調査した。
あてはめ
1. 組合は5ヶ月にわたり施設管理権を無視した無許可使用を継続しており、その態様は正当性を欠く。上告人の提案(許可願の提出、外部者入場の許可制等)は管理者として合理的であり、組合側の要求は施設管理権を過少評価するものであった。組合事務所未設置等の不利益を考慮しても、権利濫用や弱体化の意図を認める特段の事情はない。 2. 三六協定締結のため組織率を把握する必要があった一方、組合側が名簿提出を拒否したため、調査の必要性・合理性がある。記名式であっても、不利益の示唆や動揺目的等の事情がない以上、支配介入とはいえない。
結論
1. 食堂の使用拒否は施設管理権の濫用に当たらず、不当労働行為ではない。 2. 記名式照会票による加入状況調査は、不当労働行為を構成しない。
実務上の射程
企業施設利用の正当性と支配介入の限界を示した重要判例である。答案上、施設の「利用の必要性」と「管理上の支障」の比較衡量に加え、組合側の「無許可使用」や「交渉態度」といった非違行為の有無が権利濫用判断の分水嶺となる。また、加入状況調査も「必要性・相当性」の枠組みで判断される。
事件番号: 昭和57(行ツ)50 / 裁判年月日: 昭和62年5月8日 / 結論: 棄却
使用者がその企業内に併存する甲乙二つの労働組合のうち多数派の甲組合に対して組合事務所等を貸与しながら、少数派の乙組合に対しては専従者の職場復帰問題の解決が先決であることなどを理由にその貸与を拒否している場合において、甲組合との間では貸与に際し特段の条件を付したり前提となる取引を行つたりしておらず、右職場復帰問題は組合事…
事件番号: 昭和63(行ツ)157 / 裁判年月日: 平成元年12月11日 / 結論: その他
一 いわゆるチェック・オフは、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)二四条一項但書の要件を具備しない限り、これをすることができない。 二 使用者が過去一五年余にわたってしてきたいわゆるチェック・オフを中止した場合において、当時労働組合から脱退者が続出して、労働組合が当該事業場の従業員の過半数で組織されて…
事件番号: 平成5(行ツ)141 / 裁判年月日: 平成7年4月14日 / 結論: その他
従来、時間外割増賃金及び深夜割増賃金を含むとの認識の下に水揚高に一定率を乗じた歩合による賃金を支払っていた使用者が、労働基準監督署から割増賃金部分を明確にするよう指導を受けたため、水揚高に従前の率を若干下回る率を乗じた金額を基礎給としこれに時間外割増賃金及び深夜割増賃金を加算して支払うことを内容とする賃金計算方法を採用…
事件番号: 昭和54(行ツ)85 / 裁判年月日: 昭和58年2月24日 / 結論: 棄却
夏季一時金の算定の基礎となる出勤率を計算する場合にストライキによる不就労を欠勤と扱うべきか否かについて労使間の合意や慣行は成立していなかつたが、組合がはじめてストライキを実施したところ、使用者は右ストライキによる不就労を通常の欠勤と同一に取り扱つたなど判示の事実関係のもとにおいては、使用者の右措置は労働組合法七条一号の…