一 私立学校の職員室内で、教職員が使用者の許可を得ないまま組合活動としてビラの配布をした場合において、右ビラが労働組合としての日ごろの活動状況等を内容とするもので、違法不当な行為をあおり又はそそのかすこと等を含むものではなく、右配布の態様も、就業時間前の通常生徒が職員室に入室する頻度の少ない時間帯にビラを二つ折りにして教員の机の上に置くという方法でされたものであるなど判示の事実関係の下においては、右のビラの配布は、学校内の職場規律を乱すおそれがなく、生徒に対する教育的配慮に欠けることとなるおそれのない特別の事情が認められるものとして、使用者の許可を得ないで学校内でビラの配布等をすることを禁止する旨の就業規則に違反しない。 二 私立学校の中学二年の教科を担当し、かつ、同学年の学級担任に選任されていた組合執行委員甲について、使用者が、授業進度の遅れがあるとして進級後の中学三年の教科を担当させないこととし、これに伴い同学年の学級担任にも選任しないこととした場合において、右私立学校の教員間の一般的認識の上で、中学又は高校の一、二年の学級担任に選任されていた教員が進級後の学年の学級担任に選任されないことは特段の事情のない限り右教員の学級担任としての適格性に消極的評価が示されたものと受け止められており、それまでの二箇年度を通じて使用者によって甲の授業進度の遅れが問題にされたことはなく、甲を中学三年の学級担任に選任しないこととした年度及びその前年度において、その各前年度に学級担任をしていて各次年度に学級担任に選任されなかった教員が、一名を除き甲を含めてその全員が労働組合の組合員であるなど判示の事実関係の下においては、甲を中学三年の学級担任に選任しなかった使用者の行為は、労働組合法七条一号の不当労働行為に当たる。
一 私立学校の校内において教職員が組合活動として行ったビラの配布行為が無許可のビラ配布等を禁止する就業規則に違反しないとされた事例 二 私立学校の教員を学級担任に選任しなかった行為が労働組合法七条一号の不当労働行為に当たるとされた事例
労働基準法89条,労働組合法7条1号
判旨
学校内での無許可ビラ配布が就業規則に抵触する場合であっても、職場規律を乱すおそれがなく、生徒への教育的配慮に欠けるおそれのない特別の事情があるときは、実質的な規則違反とはいえず、これを理由とする懲戒処分は不当労働行為(労組法7条1号・3号)を構成する。また、組合掲示板の設置等の交渉において、具体的検討を拒み一方的な主張に終始する態度は、誠実交渉義務に反し不当労働行為(同条2号)に当たる。
問題の所在(論点)
1. 学校内での無許可ビラ配布を理由とする懲戒処分の可否(労組法7条1号・3号)。 2. 掲示板設置要求に対し、具体的検討を拒否する態度の正当性(同条2号)。 3. 慣行に反する学級担任からの除外が不利益取扱いに該当するか(同条1号)。
事件番号: 平成3(行ツ)155 / 裁判年月日: 平成6年12月20日
【結論(判旨の要点)】学校内での無許可ビラ配布が就業規則に抵触する場合であっても、職場規律を乱すおそれがなく、生徒への教育的配慮に欠けるおそれのない特別の事情があるときは、実質的な規則違反には当たらず、これを理由とする懲戒処分は不当労働行為を構成する。 第1 事案の概要:学校法人である被上告人は、就業規則で校内での無許…
規範
1. 企業施設内での組合活動は、施設管理権による制約を受けるが、ビラ配布等の行為が職場規律を乱すおそれがなく、かつ学校等の場において生徒に対する教育的配慮に欠けるおそれのない「特別の事情」が認められる場合には、実質的に就業規則違反には当たらない。これを理由とする不利益取扱いは不当労働行為となる。 2. 団体交渉において、使用者が具体的検討に入らず一方的・原則論的な主張を繰り返して合意達成の意思を欠く場合は、正当な理由のない団体交渉拒否にあたる。 3. 人事配置において、合理的理由のない慣行への違背があり、対象者が組合員である等の事情がある場合は、不当労働行為意思が推認される。
重要事実
学校法人である被上告人は、組合員Eが許可なく職員室でビラ(職場ニュース)を配布したことを理由に懲戒処分を行った。ビラは始業前、教員の机上に二つ折りで置かれたもので、内容は賃金交渉等の通常の組合活動報告であった。また、被上告人は「生徒の目に触れる」等の理由で組合掲示板の設置交渉を門前払いし、さらに、慣例では「持ち上がり」となるはずの組合員教諭Fを、特段の合理的理由なく学級担任から外した。
あてはめ
1. ビラ配布は始業15分前に職員室で行われ、内容は通常の宣伝活動の範囲内であり、業務支障や生徒への悪影響は認められない。したがって「特別の事情」があり、懲戒の根拠を欠く。組合嫌悪の姿勢も相まって不当労働行為といえる。 2. 掲示板設置に関し、生徒への配慮を理由に一切を拒否する態度は、規制のあり方についての協議を欠くものであり、誠実交渉義務に反する。 3. Fの授業進度の遅れは従前問題視されておらず、非組合員は新任され組合員のみが担任から外されている状況から、組合活動を嫌悪する不当労働行為意思が推認される。
結論
本件各懲戒処分、団体交渉拒否、および学級担任の不選任は、いずれも不当労働行為に該当する。退職勧奨については審理不尽があるため差し戻す。
実務上の射程
職場内ビラ配布の正当性判断において「職場規律を乱すおそれの有無」を実質的に判断する枠組みを示しており、特に学校事案における「生徒への影響」の評価限界を画した点に意義がある。答案上は、形式的な規則違反のみならず、実質的支障の有無を具体的態様から論じる必要がある。
事件番号: 昭和54(行ツ)85 / 裁判年月日: 昭和58年2月24日 / 結論: 棄却
夏季一時金の算定の基礎となる出勤率を計算する場合にストライキによる不就労を欠勤と扱うべきか否かについて労使間の合意や慣行は成立していなかつたが、組合がはじめてストライキを実施したところ、使用者は右ストライキによる不就労を通常の欠勤と同一に取り扱つたなど判示の事実関係のもとにおいては、使用者の右措置は労働組合法七条一号の…
事件番号: 昭和55(行ツ)101 / 裁判年月日: 昭和58年12月20日 / 結論: 棄却
公共企業体等労働委員会は、不当労働行為の成立が認められる場合であつても、それによつて生じた状態が既に是正され、正常な集団的労使関係秩序が回復されているときは、救済の必要性がないものとして、救済申立てを棄却することができる。
事件番号: 平成5(行ツ)141 / 裁判年月日: 平成7年4月14日 / 結論: その他
従来、時間外割増賃金及び深夜割増賃金を含むとの認識の下に水揚高に一定率を乗じた歩合による賃金を支払っていた使用者が、労働基準監督署から割増賃金部分を明確にするよう指導を受けたため、水揚高に従前の率を若干下回る率を乗じた金額を基礎給としこれに時間外割増賃金及び深夜割増賃金を加算して支払うことを内容とする賃金計算方法を採用…
事件番号: 昭和63(行ツ)157 / 裁判年月日: 平成元年12月11日 / 結論: その他
一 いわゆるチェック・オフは、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)二四条一項但書の要件を具備しない限り、これをすることができない。 二 使用者が過去一五年余にわたってしてきたいわゆるチェック・オフを中止した場合において、当時労働組合から脱退者が続出して、労働組合が当該事業場の従業員の過半数で組織されて…