判旨
学校内での無許可ビラ配布が就業規則に抵触する場合であっても、職場規律を乱すおそれがなく、生徒への教育的配慮に欠けるおそれのない特別の事情があるときは、実質的な規則違反には当たらず、これを理由とする懲戒処分は不当労働行為を構成する。
問題の所在(論点)
①就業規則上の校内無許可ビラ配布禁止規定に触れる行為に対し、懲戒処分を行うことが不当労働行為(労組法7条1号・3号)に当たるか。 ②生徒への影響を懸念して組合掲示板の設置交渉を拒絶することが、団交拒否(同条2号)に当たるか。 ③組合員を学級担任から外す行為が、不利益取扱い(同条1号)に当たるか。
規範
労働組合法7条1号・3号。施設管理権に基づく無許可ビラ配布禁止の就業規則が存在する場合でも、①ビラの内容、②配布の態様等に照らして、職場規律を乱すおそれがなく、かつ学校の特性に鑑み、③生徒に対する教育的配慮に欠けることとなるおそれのない「特別の事情」が認められるときは、実質的な規則違反とはいえず、懲戒処分の根拠を欠く。この場合、使用者の組合嫌悪の姿勢等の経緯を併せ考慮し、不利益取扱い及び支配介入の成否を判断する。
重要事実
学校法人である被上告人は、就業規則で校内での無許可配布を禁止していた。組合員Aは、始業15分以上前に、教員の机上に組合活動の報告等を内容とするビラを二つ折りにして置く方法で配布した。これにより業務に支障は生じなかったが、被上告人はAに対し訓告及び戒告の懲戒処分を行った。また、被上告人は組合掲示板の設置に関する団体交渉を、生徒への悪影響や管理不能を理由に事実上拒否し、組合活動に積極的な教員Bを合理的な理由なく学級担任から外した。
あてはめ
①ビラの内容は通常の組合活動の範囲内で、違法な扇動はない。態様も就業時間前に机上に置くのみで、業務支障や生徒への直接的な教育的悪影響も認められないため「特別の事情」がある。校内活動を一切否定する被上告人の姿勢から、不当労働行為意思も認められる。②掲示板設置につき規制方法の協議もせず拒否するのは、合意達成意思を欠く不誠実団交である。③担任選任の慣行に反し、組合員のみを排除している事実は、組合活動を理由とする不利益取扱いと推認される。
結論
本件各懲戒処分、団体交渉の拒否、及び学級担任の不選任は、いずれも労働組合法7条所定の不当労働行為を構成する。
事件番号: 平成3(行ツ)155 / 裁判年月日: 平成6年12月20日 / 結論: その他
一 私立学校の職員室内で、教職員が使用者の許可を得ないまま組合活動としてビラの配布をした場合において、右ビラが労働組合としての日ごろの活動状況等を内容とするもので、違法不当な行為をあおり又はそそのかすこと等を含むものではなく、右配布の態様も、就業時間前の通常生徒が職員室に入室する頻度の少ない時間帯にビラを二つ折りにして…
実務上の射程
職場規律や施設管理権と組合活動の調和を判断する枠組み。特に学校等の特殊な現場において「教育的配慮」という抽象的な理由だけで活動を制限することに制約を課した点に意義がある。答案では、施設管理権の合理的な制約の限界を論ずる際の規範として活用する。
事件番号: 昭和60(行ツ)1 / 裁判年月日: 昭和63年7月19日 / 結論: 棄却
労働組合が、組合活動のため使用者の施設を自由に使用することができるとの見解のもとに、従業員食堂の使用につき使用者と真摯な協議を尽くさず、使用者の許諾を得ないまま実力を行使してこれを使用し続けてきた場合において、使用者が、労働組合からの従業員食堂の使用申入れを許諾しなかつたこと、また、許諾のないまま従業員食堂において開か…
事件番号: 昭和54(行ツ)85 / 裁判年月日: 昭和58年2月24日 / 結論: 棄却
夏季一時金の算定の基礎となる出勤率を計算する場合にストライキによる不就労を欠勤と扱うべきか否かについて労使間の合意や慣行は成立していなかつたが、組合がはじめてストライキを実施したところ、使用者は右ストライキによる不就労を通常の欠勤と同一に取り扱つたなど判示の事実関係のもとにおいては、使用者の右措置は労働組合法七条一号の…
事件番号: 昭和63(行ツ)157 / 裁判年月日: 平成元年12月11日 / 結論: その他
一 いわゆるチェック・オフは、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)二四条一項但書の要件を具備しない限り、これをすることができない。 二 使用者が過去一五年余にわたってしてきたいわゆるチェック・オフを中止した場合において、当時労働組合から脱退者が続出して、労働組合が当該事業場の従業員の過半数で組織されて…
事件番号: 平成3(行ツ)34 / 裁判年月日: 平成7年9月8日 / 結論: その他
一 使用者が、労働組合の結成通知以来約九箇月にわたり、組合からの許可願の提出があれば業務に支障のない限り従業員食堂の使用を許可していたところ、就業時間後食堂で行われていた組合の学習会の参加者の氏名を巡回中の守衛が記録したことに反発した組合執行委員長らが右記録用紙を守衛から提出させたことを契機として、組合による食堂使用を…