公正取引委員会が、勧告審決に基づく価格協定排除措置として、違反者に対し、協定内容を掲げたうえ、「………を決定し実施しましたが、当社らの行つたこの行為が独占禁止法に違反するとの公正取引委員会の審決がありましたので、この審決に従い、この決定を破棄しました。」との文案による新聞広告の掲載を指示したことは、必ずしも違反者に違反行為の自認を強いることになるものではない。
公正取引委員会の価格協定排除措置に関する新聞広告文案の掲載指示が違反者に対し違反行為の自認を強いることになるものではないとされた事例
憲法38条1項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律48条
判旨
独占禁止法違反の審決に基づき、違反事実の周知徹底を命じることは、違反行為の内容を具体的に表示させる必要から出たものであり、自己に不利益な供述を強制する憲法38条1項には違反しない。
問題の所在(論点)
独占禁止法上の審決に基づき、刑事訴追中の違反事実を含む周知徹底を命じることが、憲法38条1項(自己負罪拒絶権)に違反するか。また、具体的な周知方法が行政庁の承認に委ねられている場合に、審決の特定を欠く違憲なものといえるか。
規範
行政処分(審決)において、違反行為の内容を具体的に表示させ、その破棄を周知徹底させることを命じる文案は、いかなる行為が違法とされたかを特定するための必要性に基づくものであれば、違反事実を自認させたことにはならず、憲法38条1項にいう自己負罪拒絶権の侵害には当たらない。また、処分の具体的方法が裁量に委ねられていても、その目的と社会通念に照らして客観的基準が存在する限り、処分の特定に欠けるところはない。
重要事実
公正取引委員会は、抗告人が違法な価格協定を行ったとして、当該協定の破棄およびその措置を取引先等に周知徹底させるべき旨の審決を下した。公取委が周知方法として示した文案は、抗告人が現に刑事訴追を受けている違法な価格協定の事実を含むものであった。抗告人は、この文案に従うことを過料の制裁をもって強制することは、自己負罪拒絶権(憲法38条1項)を侵害し、また審決主文が不特定であり違憲であると主張して抗告した。
事件番号: 昭和51(行ト)11 / 裁判年月日: 昭和52年4月13日 / 結論: 棄却
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律九七条により東京高等裁判所のした過料の決定につき即時抗告が許されないものと解しても、憲法三一条に違反するものではない。
あてはめ
周知徹底の命は、認定された違法行為の実効性を失わせるため、違反行為の存在と内容を明示させる必要から出たものである。これは審決の内容を具体的に表示させるための必要不可欠な文言であり、行為者に違反行為を「自認」させることを目的とするものではない。したがって、刑事訴追の有無にかかわらず、自己負罪の強制には当たらない。また、周知方法の承認についても、周知を命じた趣旨・目的および社会通念に照らせば、公取委の裁量には客観的基準が存在するといえるため、内容が不特定であるとはいえない。
結論
本件審決および周知徹底の強制は、憲法38条1項、14条、31条、32条のいずれにも違反しない。したがって、審決違反に対する過料決定は適法である。
実務上の射程
行政上の作為命令が事実上の謝罪や自認に近い内容を含む場合でも、それが違反是正という行政目的の達成に必要不可欠な範囲(客観的な事実の周知等)に留まる限り、自己負罪拒絶権の議論を回避できることを示した。答案上は、行政制裁と刑事手続の分離や、命令の内容が実質的な「供述」に当たるか否かの検討において活用できる。
事件番号: 昭和45(あ)997 / 裁判年月日: 昭和46年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が特定の事実について黙秘し争わなかったこと自体から不利益な事実認定を行うことは憲法38条1項に違反するが、証拠に基づき事実認定を維持することはこれに当たらない。 第1 事案の概要:被告人が犯行の年月日について黙秘し、特段の争いを示さなかった事案において、第一審判決は証拠に基づき犯行日時を認定…
事件番号: 平成19(行フ)6 / 裁判年月日: 平成20年3月6日 / 結論: 棄却
商品の原産国について不当な表示を行った者が,公正取引委員会から,一般消費者の誤認を排除するための措置として,上記表示が事実と異なるものであり,一般消費者に誤認される表示である旨を速やかに公示すること等を命じる旨の審決を受けたにもかかわらず,その履行をけ怠していた場合において,上記の者が同審決を受ける約2年半前に上記表示…