公判廷において被告人に対し黙祕権を告知しなかつたとしても、憲法第三八条に違反するものとはいえない。
公判廷において黙祕権を告知しないことは憲法第三八条に違反するか
憲法38条1項,刑訴法291条,刑訴規則197条
判旨
黙秘権の告知がなされなかったとしても、その一事のみをもって直ちに憲法38条1項に違反するものとはいえない。
問題の所在(論点)
刑事手続において黙秘権の告知がなされなかった場合、それだけで直ちに憲法38条1項に違反するか。
規範
憲法38条1項は「自己に不利益な供述を強要されない」権利を保障しているが、供述に際してあらかじめ黙秘権を告知することは、同条の直接の要請ではない。したがって、告知の欠如という事実のみから直ちに憲法違反が導かれるものではない。
重要事実
被告人が刑事手続において供述を行うに際し、捜査機関または裁判所から黙秘権(自己に不利益な供述を拒否できる権利)の告知を受けなかった事案。弁護人は、この告知の欠如が憲法38条に違反し、上告理由にあたると主張した。
あてはめ
本件において、仮に弁護人の主張するように被告人に対し黙秘権の告知がなされていなかったとしても、先行する大法廷判決の趣旨に照らせば、その一事のみをもって憲法38条の保障する黙秘権を侵害したものと断定することはできない。黙秘権告知の有無は供述の任意性や手続の適正を判断する一要素となり得るが、告知がないこと自体が即憲法違反を構成するものではないと解される。
結論
黙秘権の告知がなかったとしても憲法38条違反にはあたらず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
憲法上の議論としては、黙秘権告知は憲法直結の要件ではないことを示す。ただし、刑事訴訟法上は被疑者の取調べ(198条2項)や被告人質問(291条4項、311条1項)において告知が義務付けられており、法規違反としての違法性や供述の任意性の判断において本判決の理屈を安易に適用すべきではない点に留意が必要である。
事件番号: 昭和26(れ)198 / 裁判年月日: 昭和26年5月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同被告人が第一審の公判廷で行った供述について、被告人が反対尋問の機会を得ていた場合には、第二審で当該共同被告人の尋問申請を却下し、第一審の供述調書を証拠としても憲法37条2項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は他人生産の林檎を自ら売主として販売した事実に関し、第一審において共同被告人Aが第…