カルテル行為について私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反被告事件において罰金刑を科せられるとともに取引の相手方である国から不当利得返還請求訴訟を提起されている者に対し同法七条の二第一項の規定に基づき課徴金の納付を命ずることは、憲法三九条、二九条、三一条に違反しない。
カルテル行為について私的独占の禁止及び不正取引の確保に関する法律違反被告事件において罰金刑を科せられるとともに不当利得返還請求訴訟を提起されている者に対し課徴金の納付を命ずることと憲法三九条、二九条、三一条
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律7条の2第1項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律48条の2第1項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律89条,民法703条,憲法29条,憲法31条,憲法39条
判旨
独占禁止法違反に対する課徴金の納付命令は、罰金刑の確定や民事上の不当利得返還請求がなされている場合であっても、二重処罰の禁止を定めた憲法39条、財産権を保障する29条、および正当な手続を求める31条に違反しない。
問題の所在(論点)
独占禁止法上の課徴金納付命令が、刑事罰(罰金)の確定や民事上の不当利得返還請求の存在する場合において、憲法39条(二重処罰の禁止)、29条(財産権の保障)、31条(適正手続の保障)に違反するか。
規範
行政処分としての課徴金は、違反行為による不当な利得を没収し、または違反行為の抑止を図るという行政目的を達成するための金銭的制裁であり、刑事罰とはその目的、性質、手続を異にする。したがって、同一の違反行為に対して罰金刑と課徴金が併科されたとしても、憲法39条が禁ずる「二重の処罰」には当たらない。また、民事上の不当利得返還義務との関係においても、法律に基づく適正な行政処分である限り、憲法29条や31条に抵触するものではない。
重要事実
事件番号: 昭和29(オ)236 / 裁判年月日: 昭和33年4月30日 / 結論: 棄却
一 法人税法第四三条の追徴税と罰金とを併科することは、憲法第三九条に違反しない 二 法人税法第四八条第三項の法意は、同条第一項の逋脱犯があつた場合において、その逋脱税額が未徴収であるときは、徴税庁は、同法第二九条以下の課税標準の更正または決定の手続により、直ちに、その課税標準を更正または決定してその税金を徴収すべき趣旨…
上告人は、カルテル行為(不当な取引制限)を行ったとして独占禁止法違反の罪に問われ、罰金刑が確定した。さらに、国から不当利得の返還を求める民事訴訟を提起されていた。このような状況下で、公正取引委員会は上告人に対し、同法7条の2第1項に基づき課徴金の納付を命じた。上告人は、罰金や民事上の請求がある中での課徴金納付命令は二重処罰等に該当し違憲であると主張して、その取消しを求めた。
あてはめ
課徴金制度は、違反者が得た不当な経済的利益を剥奪して経済的秩序を回復するという行政上の目的を有しており、刑事罰としての罰金(刑罰)とは目的や性質を異にするものである。したがって、罰金刑が確定した後に課徴金を課すことは、憲法39条が禁じる同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うものとはいえない。また、国による不当利得返還請求という私法上の救済手段が存在する場合であっても、公法上の行政処分である課徴金を課すことは、適正な手続に基づく財産権の制約として許容される。
結論
課徴金納付命令は憲法39条、29条、31条に違反しない。また、課徴金の算定基礎となる売上額について、実行期間中に締結した契約額を基準とし、消費税相当額を控除しない算定方法も適法である。
実務上の射程
行政上の制裁金と刑事罰の併科の合憲性を肯定した重要な判例である。答案上では、独占禁止法における課徴金の法的性質(行政処分性)を論じる際の論拠として使用する。また、二重処罰の禁止(憲法39条)の限界を画する基準として、刑事手続と行政手続の峻別を論じる際にも参照される。
事件番号: 昭和51(行ト)11 / 裁判年月日: 昭和52年4月13日 / 結論: 棄却
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律九七条により東京高等裁判所のした過料の決定につき即時抗告が許されないものと解しても、憲法三一条に違反するものではない。
事件番号: 平成16(許)20 / 裁判年月日: 平成16年12月16日 / 結論: 破棄自判
1 非訟事件手続法19条1項所定の非訟事件の裁判を取り消す裁判に対しては,即時抗告をすることはできず,通常抗告をすることができる。 2 過料の確定裁判の存在を看過して同一事由について非訟事件手続法208条ノ2に規定する過料の裁判をした場合には,同裁判を行った裁判所は,職権により確定後の同裁判を取り消すことができる。