一 法人税法第四三条の追徴税と罰金とを併科することは、憲法第三九条に違反しない 二 法人税法第四八条第三項の法意は、同条第一項の逋脱犯があつた場合において、その逋脱税額が未徴収であるときは、徴税庁は、同法第二九条以下の課税標準の更正または決定の手続により、直ちに、その課税標準を更正または決定してその税金を徴収すべき趣旨を定めたにとどまる。すなわち同項は、徴税庁が刑事裁判において確定された逋脱税額に拘束されてその額のみを徴収すべき趣旨を定めたものではなく、また逋脱税額のほかに同法第四三条の追徴税の徴収を許さない趣旨を定めたものではない
一 法人税法(昭和二二年法律第二八号。昭和二五年法律第七二号による改正前のもの)第四三条の追徴税と罰金とを併科することは憲法第三九条に違反するか 二 法人税法(昭和二二年法律第二八号。昭和二五年法律第七二号による改正前のもの)第四八条第三項の法意
憲法39条,法人税法(昭和22年法律28号。昭和25年法律72号による改正前のもの)43条,法人税法(昭和22年法律28号。昭和25年法律72号による改正前のもの)48条
判旨
法人税法上の追徴税は、納税義務違反の発生を防止して申告納税の実を挙げるための行政上の措置であり、刑罰とは性質を異にするため、罰金と併科しても憲法39条に違反しない。
問題の所在(論点)
法人税の逋脱行為に対し、刑事罰(罰金)と行政罰的性質を持つ追徴税を併科することが、憲法39条の二重処罰禁止の原則に抵触するか。
規範
憲法39条が禁じる二重処罰とは、刑事上の責任を追及する刑罰を指す。行政上の制裁金(追徴税・加算税等)は、違反行為の反社会性に注目して科される刑事罰とは異なり、納税義務の履行を確保するための行政上の措置であるため、刑事罰と併科しても同条に違反しない。
重要事実
上告人は、詐欺その他不正の行為により法人税を免れたとして、旧法人税法48条1項に基づき刑事罰(罰金)を科された。同時に、税務当局から同法43条に基づき過少申告等に対する追徴税を課された。上告人は、刑事罰と追徴税を重ねて課すことは、憲法39条が禁止する二重処罰にあたると主張して争った。
あてはめ
旧法人税法48条の刑罰は、不正行為の反社会性・反道義性に対する制裁である。これに対し、同法43条の追徴税は、単に過少申告等の事実があれば原則として課されるものであり、申告納税制度の維持・確保を目的とした行政上の措置にすぎない。両者は目的・手続・性質を異にする別個の制度であるから、刑事手続による罰金と行政手続による追徴税を併科しても、実質的に同一の刑事責任を二度問うものとはいえない。
結論
追徴税と罰金の併科は憲法39条に違反しない。したがって、刑事裁判で確定した逋脱税額にかかわらず、徴税庁は独自の認定に基づき追徴税を課すことができる。
実務上の射程
憲法上の二重処罰禁止の射程を「刑事罰」に限定した重要判例である。行政罰(加算税、過料、行政上の処分)と刑事罰の併科が問題となる事案(例:税法、独禁法、道路交通法)において、制度の目的・性質の差異を論拠に二重処罰を否定する際のスタンダードな理論枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和42(あ)988 / 裁判年月日: 昭和43年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】重加算税は行政上の措置であり、これと本来の刑罰を併科したとしても憲法39条後段の禁止する二重処罰には該当しない。 第1 事案の概要:被告人は法人税の逋脱(脱税)行為を行い、これに対して国税通則法68条に基づき重加算税が賦課された。その後、被告人は旧法人税法48条1項等の規定に基づき、同一の逋脱行為…