一 昭和四〇年法律第三四号による改正前の法人税法四八条一項および五一条一項によれば、本件被告人Aは、犯罪の行為者として、同B株式会社は、同Cを代表者に選任している事業主として、それぞれ別個の刑事責任を負うものであり、したがつて、両被告人に対しそれぞれ刑が科せられるのは一個の行為に対して二重に刑罰が科せられるものであるとの論を前提として憲法三九条違反を主張する上告趣意の所論は、前提を欠く。 二 同一の租税逋脱行為について重加算税のほかに刑罰を科しても憲法三九条に違反しないことは、当裁判所大法廷判決の趣旨とするところである(昭和三三年四月三〇日大法廷判決、民集一二巻六号九三八頁参照。なお、昭和三六年七月六日第一小法廷判決、刑集一五巻七号一〇五四項参照。)。 三 昭和四〇年法律第三四号による改正前の法人税法四八条一項の逋脱罪は、納期の経過により既遂となり、その後に修正申告をして不足の税額を納付しても、逋脱罪の成立には影響がない(昭和三六年七月六日第一小法廷判決、刑集一五巻七号一〇五四頁参照。)。
一 いわゆる両罰規定により行為者のほかに事業主をも処罰することと憲法三九条 二 重加算税と刑罰との併科と憲法三九条 三 昭和四〇年法律第三四号による改正前の法人税法四八条一項の逋脱罪の成立時期と修正申告の効果
法人税法(昭和40年法律34号による改正前のもの)48条1項,法人税法(昭和40年法律34号による改正前のもの)51条1項,法人税法159条1項,法人税法164条1項,国税通則法68条,憲法39条
判旨
法人税法違反において、行為者と事業主の双方に刑を科すこと、及び同一の逋脱行為に対して重加算税と刑事罰を併科することは、いずれも憲法39条に違反しない。また、法人税法上の逋脱罪は、納期の経過によって既遂に達し、その後の修正申告や納付は罪の成立に影響しない。
問題の所在(論点)
1. 行為者と事業主(法人)の双方を処罰することが憲法39条に違反するか。 2. 重加算税と刑事罰を併科することが憲法39条に違反するか。 3. 法人税逋脱罪の既遂時期、及び事後の修正申告が罪の成立に影響するか。
規範
1. 法人税法(改正前)の規定に基づき、犯罪の行為者と事業主は、それぞれ別個の刑事責任を負う。 2. 行政上の制裁である重加算税と刑事罰は、その性質や目的を異にするため、併科しても二重処罰の禁止(憲法39条)には抵触しない。 3. 法人税法上の逋脱罪は、法定の納期を経過した時点で既遂となる。
重要事実
被告人Aは法人税の逋脱行為を行い、被告人B株式会社はその行為者を代表者に選任している事業主であった。また、本件逋脱行為に対しては行政上の重加算税が課されていた。被告人らは、行為者と事業主双方への処罰や重加算税との併科が二重処罰にあたること、及び後に修正申告と納税を行ったことから罪は成立しないことを主張して上告した。
あてはめ
1. 被告人Aは犯罪の行為者として、被告人B株式会社は代表者を選任した事業主として、各々独立した責任を負うため、一個の行為に対し二重に刑を科したものとはいえない。 2. 重加算税と刑罰の併科については、先行する大法廷判決の趣旨に照らし、憲法39条に違反しない。 3. 逋脱罪は納期の経過により既遂に達する。本件において納期後に修正申告を行い不足税額を納付した事実は認められるが、既に既遂に達した後の事情であり、犯罪の成立を左右しない。
結論
本件各上告を棄却する。行為者と事業主の双方を処罰すること、及び重加算税と刑罰を併科することは合憲であり、納期経過後の修正申告にかかわらず逋脱罪は成立する。
実務上の射程
行政罰(過料・加算税)と刑事罰の併科の合憲性を論ずる際のリーディングケースとして利用できる。また、経済犯罪における既遂時期の認定において、修正申告等の事後的な回復措置が構成要件該当性に影響しないことを示す根拠となる。
事件番号: 昭和45(あ)884 / 裁判年月日: 昭和45年10月8日 / 結論: 棄却
同一の租税逋脱行為について重加算税のほかに刑罰たる罰金を科しても憲法三九条に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判決(昭和二九年(オ)第二三六号同三三年四月三〇日判決、民集一二巻六号九三八頁)の趣旨に徴して肯認しうるところである。