同一の租税逋脱行為について重加算税のほかに刑罰たる罰金を科しても憲法三九条に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判決(昭和二九年(オ)第二三六号同三三年四月三〇日判決、民集一二巻六号九三八頁)の趣旨に徴して肯認しうるところである。
同一の租税逋脱行為について重加算税のほかに罰金を科することと憲法三九条
国税通則法68条,法人税法(昭和40年法律34号による改正前のもの)48条,憲法39条
判旨
同一の租税逋脱行為に対し、行政上の制裁である重加算税を課した上で、さらに刑事罰である罰金を併科することは、憲法39条の二重処罰の禁止に違反しない。
問題の所在(論点)
同一の租税逋脱行為について、行政罰としての重加算税を課した後に刑事罰である罰金を科すことが、憲法39条の二重処罰の禁止に違反するか。
規範
憲法39条が禁止する「二重の処罰」とは、同一の行為について重ねて「刑事上の責任」を問うことを指す。行政上の制裁として課される重加算税と、刑罰である罰金とは、その性質、目的、手続を異にするため、これらを併科したとしても、同一の行為について二重に刑罰を科したものとはいえない。
重要事実
被告人は、租税逋脱行為(脱税)を行った。これに対し、税務当局から行政上の制裁として重加算税が課された。さらに、同一の逋脱行為が犯罪を構成するとして刑事訴追を受け、罰金刑に処せられた。これに対し、弁護側は同一行為について重加算税と刑罰を併科することは憲法39条の二重処罰禁止に抵触すると主張して上告した。
あてはめ
本件における重加算税は、申告義務の不履行等に対する行政上の制裁であり、適正な申告秩序の維持を目的とする。これに対し、科された罰金は国家刑罰権の行使として反社会的な犯罪行為に科されるものである。このように、両者は制度の趣旨・目的を異にしており、重加算税が課されたからといって刑事上の処罰が禁じられるものではない。したがって、両者を併科することは、一の行為について刑事責任を重ねて問うものではないと評価される。
結論
租税逋脱行為に対し重加算税と罰金を併科することは、憲法39条に違反しない。
実務上の射程
行政上の制裁(秩序罰や課徴金等)と刑事罰の併科の合憲性が問われる事案において、本判例の論理は一般的に妥当する。答案上は、両者の目的、性質、手続の差異を指摘した上で、二重処罰禁止の対象となる『刑罰』の該当性を否定する構成で用いる。
事件番号: 昭和43(あ)2595 / 裁判年月日: 昭和44年4月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同一の行為について、法人税等の本税に加え、重加算税や延滞税といった行政上の制裁と刑罰を併科することは、憲法39条後段の二重処罰禁止の規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が法人税法違反の罪に問われた際、当該脱税行為を理由として、法人税のほかに重加算税および延滞税の納付という行政上の処分を既に…