重加算税のほかに刑罰を科することが憲法三九条に違反するとの主張を刑訴法四〇八条で処理した事例
国税通則法68条,法人税法159条1項,法人税法164条1項,憲法39条,刑訴法408条
判旨
行政罰である重加算税の賦課決定と刑事罰の科刑は、その目的、性質、手続を異にするものであるため、両者を併科しても憲法39条の二重処罰の禁止には違反しない。
問題の所在(論点)
行政上の制裁である「重加算税」を課した後に、同一の事実に基づいて刑事罰を科すことが、憲法39条の二重処罰の禁止に反するか。
規範
憲法39条が禁ずる「二重の処罰」とは、同一の犯罪行為に対して重ねて「刑事上の処罰」を科すことを指す。行政上の制裁(行政罰)は、適正な申告・納税の確保という行政目的を達成するための金銭的負担であり、刑法上の刑罰とはその目的・性質を異にする。したがって、行政罰を科した後に刑事罰を科すことは、二重処罰には当たらない。
重要事実
被告人は、所得税法違反等の罪に問われた刑事被告人である。これに先立ち、税務当局から脱税行為に対して重加算税(国税通則法に基づく行政罰)の賦課決定を受けていた。弁護人は、重加算税に加えてさらに刑罰を科すことは、同一の行為に対して重ねて処罰を科すものであり、憲法39条の二重処罰の禁止に抵触すると主張して上告した。
あてはめ
重加算税は、納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税制度の維持を図るという行政上の目的から、過少申告等の不正に対して課される金銭的制裁である。これに対し、所得税法違反等に対する刑罰は、国家の刑罰権の行使として、反社会的行為に対する道義的責めに照らして科されるものである。このように、両者は依拠する法的主体、目的、およびその手続において明白に区別される。したがって、先行する重加算税の存在は刑事罰の賦課を妨げるものではなく、憲法39条の禁止する二重処罰の概念には含まれないと解される。
結論
重加算税のほかに刑罰を科すことは、憲法39条に違反しない。
実務上の射程
行政罰と刑事罰の併科に関するリーディングケース。租税犯に限らず、行政上の違反行為に対して制裁金(過料、加算税等)と懲役・罰金が併せて規定されている法領域全般において、合憲性の根拠として引用できる。
事件番号: 昭和35(あ)1352 / 裁判年月日: 昭和36年7月6日 / 結論: 棄却
一 法人税法第四八条第一項の逋脱罪は納期の経過により既遂となる。 二 法人税法第四八条第一項の逋脱罪成立後に修正申告をしてこれによる増加税額を納付しても逋脱罪の成立を妨げない。 三 同一の行為について法人税法第四三条の二の重加算税のほかに刑罰を科しても憲法第三九条後段に違反しない。