青色申告の承認を受けた法人の代表者のほ脱行為を理由としてその承認が取り消された場合にその承認がないものとして当該事業年度のほ脱税額を算定することと憲法39条前段による遡及処罰の禁止との関係
憲法39条,法人税法127条,法人税法159条
判旨
重加算税は行政上の制裁であって刑罰ではないため、刑事罰との併科は憲法39条後段の二重処罰の禁止に抵触しない。また、ほ脱行為を理由に青色申告の承認を遡及的に取り消し、その税額を基準に刑罰を科しても、実行時に適法な行為を処罰するものではないため憲法39条前段に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 重加算税の賦課と刑事罰の併科は、憲法39条後段の二重処罰の禁止に違反するか。 2. ほ脱行為を理由とする青色申告承認の遡及的取消しに基づき、変更後の税額を基準に処罰することは、憲法39条前段の遡及処罰の禁止に違反するか。
規範
1. 憲法39条後段が禁止する二重処罰とは、刑事上の責任を問う刑罰の二重賦課を指す。行政上の制裁金である重加算税は刑罰に含まれない。 2. 憲法39条前段が禁止する遡及処罰とは、行為時に適法であった行為に対し、後の法律によって刑事責任を問うことを指す。行政処分の遡及的取消しに伴う税額算定の変更は、実行時の行為自体の違法性判断を遡及させるものではない。
重要事実
被告人らは、法人税を免れるためにほ脱行為(脱税)を行った。これに対し、行政上の措置として国税通則法68条に基づき重加算税が課されたほか、刑事罰も科された。さらに、青色申告の承認を受けていた法人の代表者がほ脱行為をしたことを理由に、当該事業年度に遡って青色申告の承認が取り消された。被告人側は、重加算税と刑事罰の併科が二重処罰にあたること、および青色申告取消による遡及的な税額計算に基づく処罰が遡及処罰禁止に触れることを主張して上告した。
あてはめ
1. 重加算税は、税法上の義務違反に対する行政上の制裁であり、刑法上の刑罰とはその目的・性質を異にする。したがって、二重処罰の禁止の前提となる「同一の犯罪についての重ねての刑事上の責任」には該当しない。 2. 青色申告の承認取消しは、ほ脱行為という不正事実に基づき行政上の優遇措置を剥奪する処分である。これによって当該事業年度のほ脱税額が「青色申告の承認がないもの」として再計算されるが、これは刑罰の基準となる脱税額を画定させる手続にすぎない。行為時に犯罪とされていなかった行為を後から処罰するものではないため、遡及処罰には当たらない。
結論
本件各上告を棄却する。重加算税の併科および青色申告承認取消し後の税額に基づく処罰は、いずれも憲法39条に違反しない。
実務上の射程
行政罰(過料・加算税)と刑事罰の併科が問題となる事案において、二重処罰禁止の「刑罰」の定義を論じる際のリーディングケースとなる。答案上は、行政上の制裁と刑事罰は目的・性質が異なるため併科が可能であるとするロジックを簡潔に示す際に引用する。
事件番号: 昭和55(あ)329 / 裁判年月日: 昭和55年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政罰である重加算税の賦課決定と刑事罰の科刑は、その目的、性質、手続を異にするものであるため、両者を併科しても憲法39条の二重処罰の禁止には違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、所得税法違反等の罪に問われた刑事被告人である。これに先立ち、税務当局から脱税行為に対して重加算税(国税通則法に基づく…