省略
不当労働行為によつて解雇された労働者(タクシー運転手)が解雇期間中他の職に就いて得た収入を控除しないで賃金相当額全額の遡及支払を命じた労働委員会の救済命令が違法とされた事例
労働組合法7条1号,労働組合法27条4項
判旨
労働委員会がバックペイを命ずる際の中間収入の控除については、個人的被害の救済と集団的労使関係の回復の双方の観点から合理的裁量により決定すべきであり、特段の理由なく全額控除しないことは裁量権の逸脱となる。
問題の所在(論点)
労働委員会がバックペイ命令を出す際の中間収入控除に関する裁量の範囲、及び中間収入が従前と同種の業務によって得られ、かつ組合の関与がある場合に控除を全く行わないことが裁量権の逸脱・濫用(労組法27条12項、行訴法30条)に当たるか。
規範
労働委員会がバックペイ(遡及賃金支払)を命ずるに際し、中間収入を控除するか否か及びその程度は、①被解雇者が受けた個人的被害の救済という観点、及び②組合活動一般に対する侵害を除去し正常な集団的労使関係秩序を回復・確保するという観点を併せ考慮し、合理的裁量により決すべきである。いずれか一方の考慮を怠り、又は救済の必要性の判断において合理性を欠くときは、裁量権の限界を超え違法となる。
重要事実
旅客自動車運送業者に運転手として雇用されていたDが不当解雇された後、別の運輸会社に正規従業員として就職し、従前の賃金を上回る収入を得ていた。この就職は組合の指令に基づくもので、得た賃金を一旦組合に交付し、組合から生活資金の貸与を受ける形式をとっていた。労働委員会はバックペイ命令において、これらの中間収入を一切控除しなかった。
事件番号: 昭和59(行ツ)235 / 裁判年月日: 昭和62年4月2日 / 結論: その他
不当労働行為によつて解雇された労働者が解雇期間中他の職に就いて収入を得ていた場合に、労働委員会が、右労働者の救済命令において解雇期間中の賃金相当額の遡及支払を命ずるに当たり、当該解雇が右労働者の属する労働組合の他の組合員に対する出勤停止処分と共に右労働組合に対し打撃を加える目的の下にされたものであるとの事情を考慮に入れ…
あてはめ
①個人的被害の救済の観点からは、Dの中間収入は従前とほぼ同様の営業用自動車の運転業務で得たものであり、組合への納付形式を問わず控除を考慮すべきである。②集団的労使関係の観点からは、当時の運転手の転職が容易で雇用状況が良好であったことに照らせば、解雇による打撃や組合活動への制約的効果は比較的小さい。したがって、これらの中間収入を全く不問に付すには特段の理由が必要であるが、本件では合理的な理由が見当たらない。
結論
本件バックペイ命令において中間収入を全く控除しなかったことは、労働委員会に認められた裁量権の合理的な行使の限度を超えたものであり、違法である。
実務上の射程
労働委員会の救済命令の裁量権に関する重要判例。民法536条2項に基づく私法上の賃金請求における「中間利息控除」とは異なり、行政的救済としての性質(集団的秩序回復)に由来する独自の裁量枠組みを示す。答案上は、裁量権の逸脱・濫用の検討において「二つの観点」を提示した上で、具体的妥当性を論ずる際の規範として用いる。
事件番号: 昭和45(行ツ)60 / 裁判年月日: 昭和52年2月23日 / 結論: 棄却
一、労働委員会が不当労働行為により解雇された労働者の救済命令において解雇期間中の得べかりし賃金相当額の遡及支払を命ずる場合に、被解雇者が右期間中他の職に就いて収入を得ていたときは、労働委員会は、解雇により被解雇者の受けた個人的被害の救済の観点のみから右他収入額を機械的にそのまま控除すべきではなく、右解雇が使用者の事業所…
事件番号: 昭和36(オ)519 / 裁判年月日: 昭和37年9月18日 / 結論: 棄却
不当労働行為によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について収入を得た場合、労働委員会は、いわゆる救済命令において使用者に対し遡及賃金の支払いを命ずるにあたり、右収入が副業的なものであつて解雇がなくても当然取得できる等特段の事情がないかぎり、これを遡及賃金額から控除することを必要とする。
事件番号: 昭和57(行ツ)50 / 裁判年月日: 昭和62年5月8日 / 結論: 棄却
使用者がその企業内に併存する甲乙二つの労働組合のうち多数派の甲組合に対して組合事務所等を貸与しながら、少数派の乙組合に対しては専従者の職場復帰問題の解決が先決であることなどを理由にその貸与を拒否している場合において、甲組合との間では貸与に際し特段の条件を付したり前提となる取引を行つたりしておらず、右職場復帰問題は組合事…