労働委員会は、労働組合法二七条に基づく救済の申立があつた場合において、その裁量により、使用者が同法七条に違反するかどうかを判断することができるものではない。
労働組合法二七条に基づく救済の申立があつた場合における使用者の同法七条違反の有無の判断と労働委員会の裁量権
労働組合法7条,労働組合法27条,行政事件訴訟法30条
判旨
労働委員会の救済命令について、不当労働行為の成立要件に関する判断は委員会の裁量に属するものではなく、裁判所はこれを全面的に審査し得るとした。また、誠実交渉義務を尽くし交渉の余地がなくなった場合の団体交渉拒否は、不当労働行為に該当しない。
問題の所在(論点)
1. 労働組合法7条に基づく不当労働行為の成否の判断について、労働委員会に裁量権が認められるか(裁判所の審査密度の問題)。 2. 誠実に交渉を重ねた結果、交渉が行き詰まった場合における団体交渉拒否が、労働組合法7条2号の不当労働行為を構成するか。
規範
1. 労働委員会は、労働組合法27条に基づき使用者の行為が同法7条に違反するかを判断して救済命令を発するが、不当労働行為成立の有無の判断それ自体は委員会の裁量に委ねられたものではない。したがって、裁判所は当該判断の適否を全面的に審査できる。 2. 使用者が誠実に団体交渉に応じ、もはや交渉の余地がなくなった(行き詰まった)場合には、その後の交渉拒否は労働組合法7条2号の不当労働行為に該当しない。ただし、事情の変更がある場合にはこの限りではない。
重要事実
使用者は労働組合との団体交渉において、昭和48年1月17日の交渉に至るまで誠意をもって対応してきた。同日の交渉において、双方の主張が平行線をたどり、客観的にみてもはや交渉の余地がなくなったと認められる状況に至ったため、使用者はその後の団体交渉を拒否した。労働委員会はこれを不当労働行為と認定し救済命令を発したが、原審は不当労働行為の成立を否定し、救済命令を取り消したため、組合側が上告した。
事件番号: 昭和31(オ)58 / 裁判年月日: 昭和32年12月24日 / 結論: 破棄差戻
一 使用者は、不当労働行為の救済命令が労働組合法第二条の要件を欠く組合の申立に基き発せられたことのみを理由として、右命令の取消を求めることはできない。 二 不当労働行為の救済命令発付の前提としてなされる申立組合の資格認定については、中央労働委員会規則第二五条の適用はない。
あてはめ
1. 救済内容(是正措置)の選択については労働委員会の裁量が認められる(第二瀬戸内海連絡船事件等)が、不当労働行為の成立要件に該当するか否かの事実認定および法的評価は、委員会の裁量事項ではない。そのため、裁判所は独自の立場からこれを審査することができ、本件で不当労働行為の成立を否定した原審の判断に違法はない。 2. 被上告人(使用者)は誠実に義務を尽くしており、昭和48年1月17日時点で交渉の余地がなくなったと認められる。その後の事情変更も認められない以上、当該拒否には正当な理由があり、不当労働行為には該当しない。
結論
1. 不当労働行為の成否に関する労働委員会の判断は裁量事項ではなく、裁判所の全面的な審査の対象となる。 2. 交渉が行き詰まった後の団体交渉拒否は不当労働行為にあたらず、本件救済命令を取り消した原判決は正当である。
実務上の射程
行政法の観点からは「要件認定(不当労働行為の成否)は法的判断であり裁量なし、効果(救済内容の選択)は裁量あり」という二分論の根拠として重要。労働法の答案上は、団体交渉拒否の正当理由(交渉の行き詰まり・デッドロック)を肯定する基準として、義務履行の誠実性と事情変更の有無を検討する際に引用する。
事件番号: 昭和50(行ツ)30 / 裁判年月日: 昭和52年5月2日 / 結論: 棄却
省略
事件番号: 平成3(行ツ)91 / 裁判年月日: 平成7年2月23日 / 結論: その他
甲労働組合の内部抗争によりそれぞれ甲組合と同一名称を名乗る乙組合と丙組合とが併存するに至った後に、使用者が、甲組合とのいわゆるチェック・オフ協定に基づき、乙組合の組合員から組合費のチェック・オフを行い、これを丙組合に交付したことが不当労働行為に当たる場合であっても、右組合費相当額を、組合員個人に対してではなく、乙組合に…