一 使用者は、不当労働行為の救済命令が労働組合法第二条の要件を欠く組合の申立に基き発せられたことのみを理由として、右命令の取消を求めることはできない。 二 不当労働行為の救済命令発付の前提としてなされる申立組合の資格認定については、中央労働委員会規則第二五条の適用はない。
一 不当労働行為の救済命令が労働組合法第二条の要件を欠く組合の申立に基き発せられたことを理由として、右命令の取消を求めることの許否 二 中央労働委員会規則第二五条の適用範囲
労働組合法2条,労働組合法5条,労働組合法27条,中央労働委員会規則25条
判旨
労働組合法5条に基づく労働委員会の資格審査義務は、組合の民主化等を促進する国家目的のための責務であり、使用者の利益保障を目的とするものではない。したがって、資格審査の手続や結果に誤りがあることのみを理由として救済命令の取消しを求めることはできない。
問題の所在(論点)
労働組合法5条に基づく労働委員会の資格審査において、その審査手続や内容に瑕疵があることが、使用者による救済命令の取消事由となるか。また、救済手続における資格審査に中労委規則25条の適用があるか。
規範
労働組合法5条の資格審査は、組合に同法2条等の要件具備を間接的に促進する国家目的に基づくものであり、労働委員会が直接国家に対して負う責務である。この審査は使用者に対する関係で負う義務ではないため、審査手続の瑕疵や判断の誤り自体は、直ちに救済命令の取消事由とはならない。また、不当労働行為の救済手続における資格審査は救済命令の前提にすぎず、独立の処分ではないため、中央労働委員会規則25条(決定書の作成等)は適用されない。
重要事実
労働組合が不当労働行為の救済を申し立てた際、労働委員会が資格審査(労組法2条、5条2項の要件審査)を行い、救済命令を発した。これに対し、使用者が当該資格審査の方法や内容、および決定書の不作成といった手続上の瑕疵を理由として、救済命令の取消しを求めて提訴した事案である。
あてはめ
労組法5条の趣旨は組合の自律的発展を促す点にあり、審査義務は対国家的な責務にすぎない。使用者は、組合が2条の要件を欠くことを理由に不当労働行為の成否を争うことはできるが、審査手続等の瑕疵のみを理由に命令の取消しは主張できない。本件では、救済命令の前提としてなされる審査に独立の処分性はなく、中労委規則25条に基づく決定書の作成も不要である。したがって、手続上の瑕疵を理由に取消しを認めた原審の判断は失当である。
結論
資格審査の手続や結果に誤りがあることのみをもって、救済命令の取消しを求めることはできない。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
不当労働行為救済手続における「資格審査」の法的性格を明らかにした重要判例。答案上は、使用者が「組合欠格」を主張して争う場合、それはあくまで『不当労働行為の成立要件(申立資格)』を欠くという実体上の反論として構成すべきであり、審査手続という『行政手続の瑕疵』を理由とする取消主張は認められないという論理で活用する。
事件番号: 昭和55(行ツ)40 / 裁判年月日: 昭和61年1月24日 / 結論: 棄却
相前後して結成された甲乙二つの労働組合が併存する会社において、各組合結成直前の年度の賞与においては後に甲乙各組合員となつた者らの平均人事考課率にほとんど差異がなかつたのに、各組合結成直後の年度の賞与においては甲組合員の人事考課率が乙組合員らのそれと比較して低く査定されその間に全体として顕著な差異が生じており、また、甲組…
事件番号: 平成3(行ツ)34 / 裁判年月日: 平成7年9月8日 / 結論: その他
一 使用者が、労働組合の結成通知以来約九箇月にわたり、組合からの許可願の提出があれば業務に支障のない限り従業員食堂の使用を許可していたところ、就業時間後食堂で行われていた組合の学習会の参加者の氏名を巡回中の守衛が記録したことに反発した組合執行委員長らが右記録用紙を守衛から提出させたことを契機として、組合による食堂使用を…
事件番号: 昭和61(行ツ)109 / 裁判年月日: 昭和62年4月16日 / 結論: 棄却
一 労働委員会規則四二条二項による意見聴取は、審問に参与した使用者委員及び労働者委員に公益委員会議への出席を求め、その席上で右委員の意見を聴取する方法によるものでなければならない。 二 公益委員会議が労働委員会規則四二条二項に違反し、審問に参与した使用者委員及び労働者委員の意見を聴取しなかつたとしても、それによつて救済…
事件番号: 昭和30(オ)454 / 裁判年月日: 昭和34年6月26日 / 結論: 棄却
不当労働行為の救済申立を棄却する地方労働委員会の命令に対する出訴については、行政事件訴訟特例法第二条に従い、まず中央労働委員会への再審査申立の手続を経由すべきものであり、労働組合法第二七条第一一項は、右命令に対する不服方法として、中央労働委員会への再審査の申立と訴の提起とを選択的に認めた趣旨と解すべきではない。