不当労働行為によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について収入を得た場合、労働委員会は、いわゆる救済命令において使用者に対し遡及賃金の支払いを命ずるにあたり、右収入が副業的なものであつて解雇がなくても当然取得できる等特段の事情がないかぎり、これを遡及賃金額から控除することを必要とする。
不当労働行為によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について収入を得た場合労働委員会はいわゆる救済命令において使用者に対し遡及賃金の支払いを命ずるにあたり右収入の額を遡及賃金額から控除することを必要とするか。
労働組合法7条1号,労働組合法27条4項,中央労働委員会規則43条
判旨
労働委員会が賃金遡及払を命ずる際、労働者が解雇期間中に他で得た中間収入は、副業的収入等の特段の事情がない限り、原状回復の目的を逸脱しないよう控除しなければならない。
問題の所在(論点)
労働組合法27条に基づく救済命令(賃金遡及払)において、労働者が解雇期間中に得た中間収入を控除せずに全額支払を命ずることが、救済命令の裁量権の範囲を逸脱し違法となるか。
規範
労働委員会による不当労働行為の救済は、不当労働行為がなかったのと同じ事実上の状態を回復させること(原状回復)を目的とする。したがって、賃金遡及払の金額は労働者が事実上被った損失額を限度とすべきであり、解雇がなくても取得できた等の特段の事情がない限り、中間収入を控除しなければならない。これを行わずに全額の支払を命ずることは、救済の目的を逸脱し、使用者に懲罰を科すものとして違法となる。
重要事実
労働組合法7条1号の不当労働行為(解雇)を受け、労働委員会が使用者に対し、解雇期間中の賃金遡及払を命ずる救済命令を発した。しかし、対象となる労働者4名は解雇期間中に他の職に就いて相当期間の収入を得ていたにもかかわらず、初審命令および再審査命令において当該中間収入の控除が行われなかったため、使用者がその命令の取り消しを求めて提訴した。
あてはめ
不当労働行為救済制度は私法上の損害賠償や懲罰を目的とするものではなく、事実上の原状回復を目的とする。本件において、労働者らは解雇後の相当期間、他職に従事して収入を得ていた事実が認められる。この中間収入を控除せずに賃金全額の遡及払を命ずることは、労働者が不当労働行為以前の状態を超えた利益を得る一方で、使用者に実質的な懲罰を科す結果となる。本件の中間収入が副業的である等の特段の事情も認められない以上、控除を欠いた命令は原状回復の範囲を逸脱しているといえる。
結論
中間収入を控除せずに賃金全額の遡及払を命じた救済命令は違法であり、これを取り消した原判決は正当である。上告を棄却する。
実務上の射程
労働委員会の裁量権の限界(原状回復主義)を示す重要判例である。民法536条2項に基づく私法上のバックペイ請求では平均賃金の6割(休業手当相当)の控除制限があるが、行政救済たる救済命令においては、私法上の法理に拘束されず、全額控除が原則となる点に注意が必要である(もっとも、後の判例法理により実務上は生活保障等の観点から一定の配慮がなされる場合もある)。
事件番号: 昭和59(行ツ)235 / 裁判年月日: 昭和62年4月2日 / 結論: その他
不当労働行為によつて解雇された労働者が解雇期間中他の職に就いて収入を得ていた場合に、労働委員会が、右労働者の救済命令において解雇期間中の賃金相当額の遡及支払を命ずるに当たり、当該解雇が右労働者の属する労働組合の他の組合員に対する出勤停止処分と共に右労働組合に対し打撃を加える目的の下にされたものであるとの事情を考慮に入れ…
事件番号: 平成3(行ツ)91 / 裁判年月日: 平成7年2月23日 / 結論: その他
甲労働組合の内部抗争によりそれぞれ甲組合と同一名称を名乗る乙組合と丙組合とが併存するに至った後に、使用者が、甲組合とのいわゆるチェック・オフ協定に基づき、乙組合の組合員から組合費のチェック・オフを行い、これを丙組合に交付したことが不当労働行為に当たる場合であっても、右組合費相当額を、組合員個人に対してではなく、乙組合に…